山田優が自身のインスタグラムで「梅雨も明けた?ので夏の必需品~!」と日焼け止めスプレーの写真をアップしたが、「不謹慎」とコメントが殺到。ほかにもこうした「不謹慎狩り」に遭う著名人が多数。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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「不謹慎狩り」というものがあるのだそうな。災害時に著名人が能天気なツイートをしたり楽しそうな写真をアップしたりすると「こんな大変なときに非常識だ」と叩くあれです。
西日本豪雨で大きな被害が予想されるなか、はしゃいだ様子で宴会写真をブログやツイッターにアップした政治家たちが批判されたのは当然としても、山田優さんが日焼け止め製品の紹介記事をアップしたことまで責められたのはどうなんでしょう。
確かに「今このタイミングで日焼け止め?」という違和感は否めないけど、別に山田さんも「豪雨なんかどうでもいい」とは言ってないのだから、何も叱りつけることないのに。せいぜい、「ああこの人は自分とは興味関心や物事の優先順位が全然違うのねー」とスルーすればいいだけのこと。「おまえも心配しやがれ!」と言いに行くほどの執念は、いったいどこから生まれるのやら。
また一方では、被災地に関する情報を自らのアカウントで拡散した渡辺直美さんを善人ぶっていると揶揄(やゆ)したり、被災者支援をする著名人を「偽善」「売名」と叩いたりする、偽善狩りも。
不謹慎狩りや偽善狩りの好きな人々は、いったい誰のどんな行動なら「本物の善意」だと認めて称賛するのかな。いかにも純粋で誠実そうな印象を与える人気者の、絶妙なタイミングでのちょうどいい塩梅(あんばい)のコメントであれば「素晴らしい!」と持ち上げるんでしょうか。そんなの、単に自分が感動したいからでは? いわゆる感動ポルノ的に災害情報を消費している人たちにとっては、胸が震えるような物語にそぐわない言動や、好みでない配役は"悪"ってことなんでしょう。
もし本気で被災した人を心配しているなら、とにかく支援が届くことが何より大事なはず。誰がどんな動機でやったかなんてことにワーワー言ってる暇なんてないでしょう。ネットでタレントにケチつけてる人よりも、実際にお金や物品を寄付した著名人のほうがよほど人助けをしています。
高みの見物で、善意や正論を装って他人にダメ出しする人たち。災害が起こるたびに繰り返される有名人叩きにうんざりです。正義感に酔って、ネットいじめに加担していることに気づいてほしい。
思えばこういうのって、小学生時代からありました。「先生! あの子はよそ見をしてますー」とか、「みんな! あの子は目立とうとしてるよー」とか、得意げにあげつらう子、いましたよね。不謹慎狩りはその大人版。他人を叩いている限り、自分は「正しい側」にいられる。その延長線上には非常時の「非国民狩り」のメンタリティが透けて見えます。未来の日本で軍国ネット民の大量発生なんて、悪夢だけどありそうな話。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など