尾畠さんのようなスーパーヒーローでないとダメってことではないと思うんです

山口県周防大島町で行方不明だった2歳の男児を発見し、称賛を集めた尾畠春夫さん(78歳)。尾畠さんは約20年前から全国各地でボランティア活動を行なっており、その道の「プロ」として名をはせていた。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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阪神・淡路大震災が起きた1995年はボランティア元年ともいわれました。被災地復興のために全国から集まったボランティア。私もそのひとりでした。それから20年以上が過ぎ、東日本大震災や各地の震災や水害でも、ボランティアの活動は欠かせないものに。今ではニュースで、装備や心得などの情報を流すようにもなりました。

そんななかで今回注目されたのが、山口県で行方不明になった2歳児を山の中で発見した、ボランティア歴20年以上の尾畠春夫さん。

65歳で鮮魚店をリタイアしてから本格的に取り組み、国民年金で生活しながら人生をボランティア活動に捧(ささ)げてきた尾畠さん。多くの現場での経験と強い信念が今回の救出につながったと、メディアで絶賛されました。映像を見て思わず涙ぐんだ人も多いでしょう。

これを機に「自分も人助けをしたい!」と思った人もいるでしょうし、一方で、「あんな立派な人にはなれない」と腰が引けた人もいると思います。でも、尾畠さんのようなスーパーヒーローでないとダメってことではないと思うんです。ボランティアをしている人たちが、みーんな尾畠さんのようであれと言われたら大変でしょう。ハードル高すぎますよね。

別に聖人君子でなくても、誰もが気軽に、できる範囲で、できる限りのことを、できるときにすればいい。それが当たり前になれば、人助けとか社会活動がもっともっと広がると思うんですよね。

「自己完結、自己責任。何も求めないのが真のボランティア」が尾畠さんの信念。素晴らしいですね! でも「仲間と一緒に、誰かの力を借りながら、楽しんで、時には仕事として」人助けをするのでも全然構わないと思います。むしろそうやって間口を広げることで、助け合いの気持ちが広がり、社会活動もきちんと回っていくようになる。

例えばアメリカでは、社会活動をしているNPOに企業などから多額の寄付が集まって、そこで働きながら生計を立てることができるようになっています。そうやって継続的に事業を回す人たちの下に、市民たちが「できるときに、できることを、できる範囲で」力を集めれば、困った人を助ける仕組みが持続可能になります。

日本でも今、少しずつそういう取り組みが増えています。寄付はアメリカに比べればまだまだ少ないものの、NPO法人などで働く人たちは、自己犠牲で人生を捧げなくても、生計を立てながら人助けを続けられるようになりつつあるのです。副業にしている人もいますし、「プロボノ」といって、仕事のスキルを無償で社会活動に役立てる人も増加中。私も、友人たちの活動に時々参加しています。いろんな形でのソーシャルな活動が広がればいいな!

●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など

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