8月31日、東京都千代田区で、2020年に開催される東京オリンピック(以下、東京五輪)のボランティアの募集説明会が開催された。
満員となった会場には約230人が集まり、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下、組織委)や都庁の担当者の話に熱心に聞き入った。
説明会終了後、都内の中堅商社で働く男性(60代)は、ボランティアに志願する理由をこう話した。
「前回の東京五輪(1964年大会)のときは高校生で、都内に住んでいました。テレビを通じて感じた熱気、感動を今でも鮮明に覚えています。だから、今度はボランティアとして大会に参加し、今の子供たちに五輪の感動を与える側に回りたいんです」
だが、東京五輪のボランティアには、否定的な目を向ける人が少なくない。特にネットでは「やりがい搾取だ」「ブラックだ」と、待遇面などに批判が噴出している。
『ブラックボランティア』(角川新書)の著者で著述家の本間龍氏はこう指摘する。
「ボランティアの募集要項を見ると、各ボランティアの活動について『1日8時間程度』『10日以上が基本』とあり『連続での活動は5日以内』とあります。
さらに五輪開幕前には各種研修への参加は強制。ボランティアとは本来、自発的にするものですが、ここまで拘束したらもはや仕事です。報酬があってしかるべきでしょう」
実際、先日までインドネシアで開催されていたジャカルタ・パレンバン アジア競技大会では、ボランティア全員に日当30万ルピア(約2300円)が大会組織委から支給されていた。東京五輪もこれを見習っては? 組織委の広報担当者に聞いてみた。
「有償ボランティアが活躍されているスポーツイベントがあるのは承知しております。しかし、五輪に限っては過去大会を見ると、いずれも現在の募集要項に近い形でボランティアの募集、運営が行なわれています」
だが、組織委の有識者会議の一員で『東京オリンピックのボランティアになりたい人が読む本』(イカロス出版)の著者、西川千春氏はこう話す。
「私は、ロンドン五輪(12年夏季)、ソチ五輪(14年冬季)、リオ五輪(16年夏季)と3大会連続でボランティアに参加してきましたが、有償ボランティアの事例は少なくないですよ。例えばリオ五輪では、空港や駅で交通案内をする都市ボランティアは有償で、バイトのような感じでした」
五輪のボランティアにおいても、無償が当然というわけではないようだ。
『週刊プレイボーイ』39・40合併号(9月10日発売)「大会組織委にも直接聞いた! 誤解だらけの『東京五輪ボランティアはブラック』説」では、大会期間中の交通費や宿泊費支給についてや、学生ボランティアの動員に関しても、組織委員会に直撃している。