10月に行なわれた「第42回世界オセロ選手権」(チェコ・プラハ)で、11歳の福地啓介君が初優勝し、世界中を驚かせた。これまでの最年少記録(15歳)を大きく塗り替える快挙である。
その上、福地君が飛行機で帰国する際、搭乗機の機長が機内アナウンスで偉業をたたえ、「実は以前の記録は、私が1982年に立てたものです」というサプライズスピーチをしたことも相まって、大きく日本のメディアに取り上げられることになった。
11歳で世界一になった福地君。彼はなぜこれほどまでに強いのか?
そこで、昨年の世界オセロ選手権優勝者で、福地君との対戦経験もある高梨悠介九段に、その秘密を聞いた。
「ほとんどのオセロプレイヤーは独学でオセロを学びます。街中にオセロ教室などは、あまりありませんから、コンピューターと対戦しながら学んでいくんです。
ただ、コンピューターはとても強いので戦っていてもあまり面白くない。そこで、世界中にいるオセロプレイヤーと対戦して、その記録をコンピューターに読み込ませ、どこが悪かったかなどゲームの反省をするというのが一般的な練習方法です。そうした練習を僕らはパソコンを使ってやっています。
しかし、福地君はパソコンよりも頻繁に触れるスマートフォンで、小さな頃からコンピューターを相手に対戦していました。だから練習量も多く、打ち方もコンピューターに近い」
打ち方がコンピューターに近いとは、どういうこと?
「オセロは、両者が最善を尽くすと引き分けになるといわれています。ですから、勝ったほうに勝因があるのではなく、負けたほうに敗因がある。相手にミスをさせるのがオセロなんです。
コンピューターと対戦していると、ひたすら最善の手を打ってきます。しかし、人間は難しい局面になると最善ではない手を打つというミスを犯す。
ところが福地君は、どんなに難しい局面になってもいつもコンピューターのように最善の手を打つんです」
さらに福地君は、判断を間違えないだけでなく、相手のミスを誘うのもうまいという。
「今年の世界大会の準決勝で、僕は福地君に負けました。そのとき福地君は、中盤で最善の手とは違う手を打ってきた。自分が多少不利になってもいいから、あえて先を読み合う難しい局面にするのです。
そして僕は、先の読み合いで混乱してミスを犯してしまった。しかし、福地君はその後、最善の手を打ち続けたので、結局、僕の負けとなってしまったというわけです」
恐るべき11歳。単純なようで実は奥が深いオセロ。『週刊プレイボーイ』46号(10月29日発売)では、"オセロ5つの必勝法"を高梨悠介九段が紹介している。