ファンやユーザーといった"共感者"から事業達成のための支援金を集めるネットサービス、「クラウドファンディング」(以下、CF)が日本でも年々広がりつつある。
そんななか、OVERDRIVEという美少女ゲームメーカーが10月17日、国内CF史上最高となる支援金を調達して注目を集めた。その額、なんと約1億3230万円!
このプロジェクトの仕掛け人であり、同社代表のbamboo(バンブー)氏とはいったい何者なのか? これまでCFで調達した額、実に4億円超えで、現在はキュレーターとしても活動するなど"CF界のすべてを知り尽くす男。成功率100%を誇るCF成功のメソッドとは?
* * *
――さまざまな肩書をお持ちのバンブーさんですが、いったい、何者なのでしょうか?
バンブー 僕はOVERDRIVEというゲームブランドの代表をやっていて、そこでエロゲーを作ってるんですけど、一応、milktub(ミルクタブ)というバンドでライブをやったり、アニソンを歌ったりしているミュージシャンです。いや、一応じゃねえな、そっちが本業です(笑)。
――10月17日に締め切られたOVERDRIVEの新作タイトル、『MUSICA!(ムジカ)』の開発プロジェクトで、国内のCF最高金額(1億3230万2525円)を達成し、話題を集めました。どんなゲームなのでしょうか?
バンブー なんせまだできていないんですが(笑)、12年間やってきたOVERDRIVEの集大成的なものになると思います。音楽を奏でている人たちの生きざまをリアルに描く作品ってゲームではあまりないんですよね。バンドを組むのに憧れた人は多いと思いますが、人間関係や環境も難しくていろんな葛藤がある。そういうところを深くえぐる作品になると思います。
――7月30日にCFで支援募集を開始したところ、開始30分で目標金額(3969万円)を達成されたとか。
バンブー 目標金額に到達するのに1ヵ月くらいかかると思っていたんですが、開始5分で1000万円、30分でまさかの目標金額達成ですから最初は何かの間違いじゃないかと(笑)。目で見えるお金の集まるスピードに思考が追いつかないというか。このときはニコ生で放送していたんですが「ファンのみんなの熱量を舐(な)めてた、ごめん!」って謝ったんです。
――結局、初日だけで7000万円も調達されました。勝因はどこにあったと?
バンブー この5年、僕はファンに対していろいろなCFを提案してきたんですが、いつもリターンをめちゃくちゃ豪華にしてきた。だから僕らのお客さんはCF慣れしているというか、協力したらそれなりの恩恵があることを最初から知っているんです。これは前提としてデカいでしょう。
――昨日今日ではない積み重ねがあると。
バンブー ええ。それと僕は初日サクセスにこだわるんです。普通は期間内に目標金額を集めればいいと考えるんですが、それは二流がやることだろうと。僕は1.8流なんで(笑)、初日、遅くても翌日には目標金額を達成して、その先の期間内で200%、300%を狙います。それだと見ている人や参加している人も「200%いってるじゃん!」って喜びを共感できますからね。
そのためにはパトロン(支援者)になるお客さんに対する事前の企画のプレゼンだったり、リターンの詳細を丁寧に伝えることが大事で、そこに多くの時間を使ってます。そうすれば、「あとはお金を出してもらうだけ」という状況ができますから。
――『MUSICA!』プロジェクトでは一番高い約70万円のコース(限定5セット)がわずか5分で完売。ここにはバンブーさんによる「浅草サシ接待」や「完成の宴参加券」など、かなりユニークな特典も含まれていましたが、これらはどのように決められるのでしょうか?
バンブー 特典は昨年末の段階でほぼ決まってました。早い段階からいくつもアイデアを出しておいて、あとはお客さんと直接詰める感じです。
――どういうことですか?
バンブー お客さんは何が欲しくて、いくらならお金を出すのかを直接聞くんです。実際、僕はこれまでニコ生とかを使って何度もファンと議論してきました。「これが欲しいんじゃないかな?」って考えるんじゃなくて、直接聞いたほうが早いじゃないですか。スマホのゲームに何十万円も課金する人がいるけど、結局、人が好きなことにお金を出す感覚って、他人には理解できないんです。だったら聞くしかないと。
――究極のマーケティングですね。
バンブー 以前、メッセンジャーバッグを作ったことがあって、当初は1万5000円ぐらいの価格帯で製造数100ぐらいを考えていたんです。で、生配信で「これいいだろ!」ってやったら、お客さんが防水もつけてくれっていう。でも防水つけると3000円高くなるよって言ったら、それでもいいと。そんな調子であれこれ注文に応えていった結果、なんと2万5000円のバッグになってしまって......。
これで売れなかったら会社潰れるぞって震えましたね(苦笑)。「そうなったらIPアドレス探って、おめーらの家、一軒ずつ回って文句タレてやるからな!」って言ったんですけど結局、1600個も売れた。ニーズに応えて作れば、値段が上がっても買ってくれるんだなって、そのとき思ったんです。
――もはや受注生産ですね。
バンブー そう、究極そこなんですよ。『ドリフターズ』ってマンガで織田信長が「戦争はいろんなことをやった後の帰結で、そこまでに何をしたかによって勝敗は決まる」って言ってて。僕はCFもそれと一緒だと思うんですよね。
お金を落とすことをエンタメにする――『週刊プレイボーイ』47号(11月5日発売)では、bamboo氏のカネ集めの極意、そしてクラウドファンディングの未来についても語ってもらっている。
●bamboo(バンブー)
1973年生まれ。美少女ゲームブランド「OVERDRIVE」代表。クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」ではプロジェクトオーナー、顧問、キュレーターとして数々の案件で目標金額を達成。自身がボーカルを務めるロックバンド「milktub」ではテレビアニメ『バカとテストと召喚獣』や『有頂天家族』などで主題歌を担当した
■恋愛アドベンチャーゲーム『MUSICA!(ムジカ!)
最終作となる恋愛アドベンチャーゲーム。同メーカーが今まで発表した作品同様のバンド青春モノで、CF義援金で鋭意制作中。約10年ぶりに業界復帰した瀬戸口廉也がシナリオを担当。bamboo氏いわく、「音楽に携わったことのある人すべての心を深くエグる内容」とのこと。来夏発売予定