ハラスメントという言葉をこんなに何度も聞いた年はなかったんじゃないでしょうか

毎年恒例の「今年の漢字」が今月12日に京都・清水寺で発表された。自然災害の多い一年だったことを踏まえ、「災」という一字が1位に選ばれた。2位、3位はそれぞれ「平」「終」。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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今年の漢字は「災」。確かに、自然災害が多い年でした。被害に遭われた方が一日も早く平穏な日常を取り戻せるようにと祈りながら、ゆく年を振り返る師走です。

私の今年の漢字は「女」です。お察しのとおり、今年は女性をめぐるさまざまな出来事がありました。昨秋には伊藤詩織さんが性暴力被害の本を出され、昨年末にはブロガーのはあちゅうさんがセクハラ被害を告発。そのまま年明け後もハラスメントに関する議論は熱を帯びて継続し、4月にはテレビ局の女性記者が財務事務次官によるセクハラ被害を明らかにしました。

報道番組やワイドショーでは、テレビ局の女性アナウンサーたちが「セクハラはあってはならない」と勇気を持って自分の言葉で発言し、女性アナのイメージを大きく変えました。

被害を告発する女性が現れるたびに、加害者ではなく、被害者へのバッシングが起きる背景には、女性蔑視や性的合意に関する無知に加え、ひどい目に遭っても我慢するのが美徳であるという刷り込みのもとで強い抑圧を抱えた人々の怨嗟(えんさ)が感じられました。

その後ハラスメントの問題はセクハラにとどまらず、日本大学アメフト部やスポーツ界のパワハラ問題へと拡大。ハラスメントという言葉をこんなに何度も聞いた年はなかったんじゃないでしょうか。

8月には文部科学省の官僚の汚職をきっかけに、東京医科大学が入試で女性や多浪者に対して不当な点数操作を行なっていたことが判明。その後、多くの大学で同様の点数操作が行なわれていたことがわかりました。12月には順天堂大学がやはり点数操作で女性を落としていたことを認め、「女性は受験時にコミュニケーションが高く、面接に優利」という謎の釈明が炎上。

こうした差別は「みんな知っていた」「企業の採用でも女性が多くならないように調整している」などの現状を追認する声もありますが、以前から半ば公然と行なわれてきた入試や採用の女性差別がこれを機に「許されないもの」として認識されたことは大きな意味があります。

5月には「政治分野における男女共同参画推進法」が施行され、今後は候補者を男女同数にすることなどを通じて、地方議会や国会に女性議員を増やすことが決まりました。しかしそんななか、秋の第4次安倍改造内閣では女性閣僚はたったのひとり。

いろいろあるなかで、この一年で確実に世論は変わりました。12月のM-1出場者による審査員・上沼恵美子さんへの「更年期」侮辱発言は、ネット上だけでなく芸人仲間からも批判されました。2年前なら笑ってスルーされたかも。

ハラスメントや差別など、女性をめぐる問題は社会全体の歪(ゆが)みを映し出します。今年はその大きな節目になった年でした。来年もこの変化の流れが続くでしょう。 

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『幸せな結婚』(新潮社)、『絶対☆女子』(講談社)など

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