『SPA!』の「ヤレる女子大学生ランキング」が大炎上。女性の顔にクリームを塗りたくった西武・そごうの広告にも批判が集まるなど、今後は女性蔑視や人権問題により厳しい視線が送られる時代に。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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急にどうしちゃったの? 怒ってばっかりで、いやな世の中だな。
と、思っている人も少なくないでしょう。年明け早々、西武・そごうの広告「わたしは、私。」が批判され、『週刊SPA!』の「ヤレる女子大学生ランキング」が炎上し、『ワイドナショー』での松本人志さんの発言がネットでバッシングされ......2019年が始まって半月の間にこれです。
西武・そごうは、社会構造の問題である女性差別を個人の意識の持ちようで乗り切ろうとするメッセージに加え、女性の顔や体に白いクリームたっぷりのパイがぶつけられるビジュアルイメージで批判されました。去年、医大の入試で点数操作が明らかになったばかりですからね。
「わたしは、私。」とかいくら気の持ちようを変えたところで、社会からパイを投げつけられている状況自体は変わりません。セクハラも女性差別も、もういいかげんにしろよ!という女性の怒りが全然読めていなかったので、炎上したのです。
ちなみにクリームパイって、アメリカのポルノでは"中出し"を意味する言葉なのだそうですよ。制作陣は知らなかったのだと思いたいですが、クリームだらけにされた上に「わたしは、私。」がカッコいいと言わされる女性の図って、あまりにも象徴的です。
「ヤレる女子大学生ランキング」はすぐさま女子大学生が抗議の署名活動を始め、瞬く間に数万名が賛同。記事中で実名を掲載された各大学は抗議の声明を出し、編集部は謝罪したものの、不快な思いをさせたという謝罪文からは、女性蔑視に対する真摯(しんし)な反省は感じられません。学生と編集部が話し合いの場を設けて、編集部もなぜダメなのかを理解したようです。海外の主要メディアでも報じられましたが、なんでかってこれ、人権問題なんですよね。
うわ、出た人権!とか引かないでね。もうこれが常識なのですよ。シャレが通じないなあ、とため息をついているあなたはまずいです。マジでそろそろ淘汰(とうた)されます。もしかして、すでに会社の中でも知らぬ間に株を下げているかもしれません。セクハラや差別に鈍感な人は企業にとったらリスク要因でしかないですから、そうっと外されていくんです。今までずっと通用してきたんだからと、男性週刊誌のノリで生きるのはもうやめましょう。週プレも他山の石として生かしてくださいね。
「お得意の体を使って」という松本さんの発言に対する指原莉乃さんの反応が実にわかりやすいです。まともな感覚の持ち主は、「え? 何言ってるの、やばいこのオヤジ」ですよ。調子を合わせて笑ったりしないんです。そういう人が増えてきていることに気づかないと、時間の問題で静かに淘汰されます。今年は平成も終わることだし、生き残るためにちゃんとアップデートしないとですね。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『幸せな結婚』(新潮社)、『絶対☆女子』(講談社)など