男はマッチョでやんちゃであれ、っていうメッセージは、いじめや女性蔑視の温床だと思いますか 男はマッチョでやんちゃであれ、っていうメッセージは、いじめや女性蔑視の温床だと思いますか

「男らしさ」とは何かという疑問を投げかける髭剃りメーカー「ジレット」のCMがきっかけで、世界的な論争に。男性とは、女性とは、という昨今焦点が当たりやすいトピックを改めて考える契機に?

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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皆さん、今世界でちょっとした髭剃(ひげそ)り製品ボイコットが起きているのをご存じでしょうか。

といっても、カミソリを当てるのは髭に対する暴力だ!ってことじゃありません。P&G傘下の髭剃りブランド、ジレットが打ち出した広告動画が議論を呼んでいるのです。

「有害な男らしさ」をなくそう、と呼びかけるこの広告では「男の子なんだから」と奨励されてきた「男らしさ」がいじめやセクハラや暴力を生み出していると示し、男性にとって最善のあり方ってこれでいいの?と男性のナレーションが問いかけるもの。

そして、男子の取っ組み合いを止めたり、いじめをやめさせたり、路上で女性の後をつけようとする男性を「クールじゃないよ」と止めたり、チャラい感じでナンパしようとする男性に「やめなよ」と声をかけたりする男性たちが登場します。髭を剃ろうと鏡を見つめる男性たちの背後に流れるのはいじめや#MeTooムーブメントを報じる声。従来の男らしさは男にとっても有害だったのでは、と問いかける内容です。

これまで、マッチョでモテる男がカッコいい、という売り方をしてきた髭剃りブランドが打って変わって男らしさの呪いについて問いかけたのですから画期的。これに対して賛否両論が噴出し、マッチョな男たちは男を貶(おとし)めるものだと大反発。ジレットの髭剃りは買わない! と不買運動が起きています。

一方で、ひどい男をなくそうというだけで全男性を否定しているわけじゃないんだから冷静になれよと呼びかける男性著名人や、よく言ってくれたという男性の声も。

皆さん、どうですか。男はマッチョでやんちゃであれ、っていうメッセージは、いじめや女性蔑視の温床だと思いますか。

ジレットに続いて、同じ髭剃りメーカーのシックもこんなキャンペーンを始めています。「ロッカールームトークを見直そう」。ロッカールームトークといえば、トランプ大統領が女性に対するめっちゃ下品で差別的な発言を取り沙汰されたときに「あれはよくある男の更衣室の雑談だよ」といなしたことでも有名です。男同士の戯言(ざれごと)さ、と女性蔑視を矮小化(わいしょうか)して批判されました。

シックでは、男同士でマッチョさを競うのではなく、男性が悩みをオープンにし、語り合う場にしようと提案しています。男性の支持を集めるアスリートのスーパースターが登場し、ロッカールームを模したスタジオで不安や苦悩について語り合う動画です。

男らしくあらねばと封じ込めてきたつらさを安心して吐き出してシェアしよう、有害な男らしさをやめよう、というキャンペーン。こちらも「男を貶めている」と怒る人がいそうですね。ジレットでもシックでも髭を剃れないとなると、カミソリを探すのも大変そう。あなたも明日鏡を見たら、男らしさって?と自問してね。

●小島慶子(こじま・けいこ)    
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『幸せな結婚』(新潮社)、『絶対☆女子』(講談社)など

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