泉佐野市の千代松大耕市長は2期目。就任以来、財政再建のために賛否を呼ぶさまざまな試みに着手してきた。市民からの評価は高い

総務省と大阪・泉佐野市がバトルを演じている。きっかけは2月1日に泉佐野市が発表した、「なくなり次第終了 Amazonギフト券付きふるさと納税100億円還元 閉店キャンペーン」。

高額化するふるさと納税の返礼品を問題視した総務省は昨年、「制度の趣旨に合わない返礼品」の自粛を要請。そして、今年6月以降は返礼品を「寄付額の30%以下の地場産品」に限定すると通達した。

ところが、それを無視するかのように、泉佐野市は寄付額の最大50%分の返礼品に加え、10~20%分のギフト券を総額100億円分プレゼントするとぶち上げたのだ。

当然、総務省は激怒し、泉佐野市を今年6月以降、ふるさと納税の対象自治体から外すことを示唆。金券欲しさに泉佐野市への寄付が集中すれば、ほかの自治体の取り分が減ってしまう。過度な競争は制度の趣旨に反する――そんな総務省の言い分は一見正しいように思えるし、実際、メディアやネットでも泉佐野市に批判的な声は多い。

なぜこんな露骨なことをやるのか? 総務省にケンカを売りたいのか? 泉佐野市の成長戦略室を直撃した。

――泉佐野市は2017年度のふるさと納税日本一(135億円)です。まだ足りない?

「泉佐野市は08年に財政健全化団体に転落し、今も約1000億円の借金を抱えています。そのため、市名をネーミングライツとして売り出すことを考えるなど、収入増の策を模索してきました。ふるさと納税もそのひとつで、集まった寄付は教育や福祉に使っています。それでも市内に18ある小中学校のうち、3校にやっとプールを造れただけ。もっとふるさと納税額を増やしたいと考えています」

――とはいえ、納税の返礼品に100億円分のギフト券というのはやりすぎでは?

「ギフト券は返礼品ではなく『おまけ』にすぎません。今回のキャンペーンは企業が運営するふるさと納税サイトではなく、市の直営サイトのみで募集します。そのため、通常はサイト運営企業に払う手数料が不要となり、その浮いた分をギフト券として納税者に還元する計画です。

昨年9月、静岡県小山町(おやまちょう)が寄付額の40%のアマゾンギフト券を返礼品としたことで批判されましたが、そのケースとはまったく違います」

――総務省に叱られても、ギフト券提供をやめない?

「今回のキャンペーンの一番の目的は寄付金集めよりも、協力事業者の"倒産防止"なんです。昨年の総務省の一方的な通達により、地場産品以外を扱ってきた地元企業は今後、ふるさと納税の返礼品に商品を提供できなくなります。泉佐野市の場合、従来の協力企業140社のうち70社が仕事を失いかねない状況。へたをすれば倒産です。

そこで、ギフト券をおまけにつける代わりに、返礼品の配送月をかなり先まで延ばすコースを設定し、その間に70社には倒産を防ぐ対策を立ててもらおうと考えました。だから"閉店キャンペーン"と名づけたんです」

よくよく聞いてみると、財政再建と地元企業の救済に必死なだけのよう。

「話し合いたいと何度もお願いしているのに、総務省からは半年以上も返事がありません」(市成長戦略室)

総務省も、まずは話し合いから始めてみては?