二審で逆転敗訴した大学側が最高裁に上告するかどうかはまだ不明

「アルバイトにボーナス(賞与)が出ないのは違法」。大阪高等裁判所が、2月15日にそんな判決を下した。

これは大阪医科大学のアルバイト職員だった女性が、「正社員と同じ仕事なのにボーナスがなく、賃金格差があるのは不当」だと訴えていた裁判。一審では全面的に退けられたが、二審では逆転勝訴し、大学側に約110万円の支払いが命じられたのだ。

これを受けて、ネットでは「画期的」「早くこれがスタンダードになってほしい」など喜びの声が上がっている。

なぜ、二審で判決が覆ったのか。労働問題に詳しい今井俊裕弁護士が解説する。

「労働契約法第20条では、いわゆる正社員(無期契約労働者)と、契約社員やアルバイト(有期契約労働者)で不合理な労働条件の差異を設けることを禁止しています。

例えば、『正社員は社員食堂を使っていいが、契約社員はいけない』ということに合理的な理由はなく、単なる差別になるからです。しかし正社員と契約社員が同じ仕事をしていた場合、賃金を同じにしなければいけないかというと、そういう法律は今はありません」

これが一審判決の根拠になっているという。

「しかし二審では、正社員に支払われていたボーナスが一律の基準によっていたため、就労への対価としての意味も認められること、非正規雇用の従業員が増えてきている状況と、同一労働同一賃金という時代の流れを裁判所が重く見て、『ボーナスがゼロというのは不合理』という判断をした。ですから、正社員と同じ金額ではなく、6割程度の支払いを命じているのです」

では、この判決は今後どのような影響を及ぼすのか?

「今後、アルバイトの人が同じような訴訟を起こしたら、勝つ可能性が高まりました。例えば、コンビニで働いているアルバイトは、レジ打ちや在庫管理など正社員の業務内容とそれほど変わらない。フルタイムで仕事をしているフリーターであれば、正社員の何割かのボーナスをもらえることもありえます。ただ、午前中だけとか、週に3日だけとか、パートタイムで働いているアルバイトの人がボーナスをもらうのは難しいかもしれません」

もちろん、企業側も手をこまねいているわけではない。

「これからは、従業員に一律にボーナスを払うというのではなく、営業成績や貢献度、勤務態度などに応じて差をつけて支払うようにするのではないでしょうか。正社員は営業活動などで頑張っているため貢献度が高いということでボーナスを出せますが、アルバイトには頑張れる仕事が与えられないまま、貢献度が低いためボーナスが出せないと理論武装するでしょう」

ボーナスとは本来、勤務成績に応じて支給されるものだ。ある意味、その原則に戻るだけともいえるが、すると正社員もこれまでのように、毎回決まった金額のボーナスをもらえなくなる可能性がある。

この大阪高等裁判所の判決に続き、5日後の2月20日には東京高裁で、契約社員と正社員の退職金の格差は違法であるとする控訴審判決が下されている。

今年4月からスタートする働き方改革。その柱のひとつである「同一労働同一賃金制度」が、少しずつわれわれの生活を変え始めている。