建前は進化しているけど本音は旧態依然

大手企業社員が"就活セクハラ"で逮捕される事件が相次いで発生。2月に逮捕された元会社員はOB訪問マッチングアプリに登録していたという――。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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質問です。YESかNOで答えてください。本音回答でお願いします。

1:女性の後輩や部下が就活や仕事の相談に乗ってほしいと言ってきたら、自分に気がある可能性ありだと思う。

2:ふたりで食事をしたら、雰囲気次第で性的な接触もありだと思う。

3:女性は性的魅力を武器に使っていると思う。

4:女性は一流企業に勤める男性と知り合ったら、結婚したいと考えるものだ。

どれも今どきは「NO」と答えるのが正解だと知っているでしょう。でも、本音の回答はどうかな。やっぱり俺に気があるんじゃないかなとか、お酒飲んでいい感じになったらOKだよねとか、そもそも化粧もおしゃれも男ウケ狙いだし、当然女を武器に使っているよねと考えたことはないでしょうか。しょせん女は男の肩書目当てだよねとか。

もしひそかにそう考えているとしても、いきなりあなたを人でなし認定したりしません。日常会話でも目にするメディアすべてでも、ずっとそういうものだとされてきたから、そのように考えてしまうのはわかります。

けど、気づいてほしい。4つとも全部勘違いです。「どうせ相手がイケメンや金持ちなら全部OKなんだろ」とか言わないでくださいね。それも違います。女性はイケメンや金持ちには何されてもいい、なんて思ってません。「実際、男をその気にさせて世渡りしまくってる女を知ってるぞ」と言うかもしれないけど、一部の例で全女性を語らないで。

セクハラはダメというのがお題目ではなくリアルなルールとして浸透する一方で、女性に対するこうした思い込みはなかなかなくなりません。建前は進化しているけど本音は旧態依然。

「就活生はブルーオーシャン」と言った男性がいるのだとか。今問題になっている"就活セクハラ"では、立て続けにふたりの逮捕者が出ました。いずれも有名企業に勤めていた20代男性社員。就活のマッチングアプリを使って女子学生と知り合い、性暴行を加えたとして逮捕されました。それも氷山の一角かも。

就活生をヤレる女子学生と勘違いしている男性社員は少なくなく、「学生は社員でも取引先でもないからセクハラしても大丈夫」というのが先述の「ブルーオーシャン」発言なのだとか。

ウェブメディア『ビジネスインサイダージャパン』の調査では、就活セクハラを経験した女子学生は5割にも及ぶといいます。問題が発覚してからはマッチングアプリの規定の見直しなども行なわれていますが、万全とはいえません。

就活と無関係な個人的な質問や性的な質問をするのももちろんNG。自分は大丈夫と思っていても、本音が変わらないと行動は変えられません。女性に対する思い込み、あなたは大丈夫ですか。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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