子育てをしている世代の男性が頑張って前例を作れば、後進も続きやすくなるでしょう

「男性の育休"義務化"を目指す議員連盟(仮称)」の呼びかけ人には、参院議員の松川るい氏、衆院議員の和田義明氏らが名を連ねる。松川氏は3月の国際女性会議でも男性の育休義務化を提案。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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「ついに山が動いた!」とツイッターのタイムラインがざわついた自民党の「男性の育休"義務化"を目指す議員連盟(仮称)」の設立。男性の育休義務化は、少子化対策として有効であると打ち出しています。

実はこれ、私の周囲でもよく聞く話。共働きなのに夫が家事も育児もやらないため、妻たちはいわゆるワンオぺ育児で疲弊し、「ふたり目は無理」どころか「子育てが一段落したら別れる」とまで決意していたりします。

これまで男性は、子供が生まれたらますます稼ぐのが父親の務めと仕事に精を出してきたのでしょう。私の父もそうでした。でもそれって、専業主婦の妻がいて、働けば働くほど給料が上がった時代の話。今は共働きで仕事も家事も育児も夫婦がチームで回さないとなりません。

にもかかわらず世間にはまだ「男が子育てなんて」という意識が強く、育児休業制度を整えても、とてもじゃないが男性社員は取得できないというのが実情かも。

でも男性の意識は確実に変わっています。ある新聞の取材を受けたときには記者が「すみません、取材候補日をふたつ押さえさせてください。実は今度の週末に娘の運動会がありまして、雨が降ったら順延になるのです。その場合は第2候補の日でもいいですか」と。

いいに決まっているので快諾しました。私が子育て経験があるので言いやすかったのかもしれません。記者は若い男性で、社内に託児所もあるとのこと。こういう感覚が普通になってきたのだなあと心強く思いました。

また、ある月刊誌の男性編集者は、思い切って育休を取りたいと言ったら上司も同僚もいいねと言ってくれて拍子抜けしたそうです。保守的な風土で知られる出版社でも、変化は起きているのだなと驚きました。

テレビの世界では、BS日テレ『深層NEWS』の近野宏明キャスターが育児のために1ヵ月番組を休んだことが話題になりました。これはなかなか勇気のいることだったはず。テレビ業界は長らく、家に帰らないのが武勇伝になる世界でしたから。

今こうして子育てをしている世代の男性が頑張って前例を作れば、後進も続きやすくなるでしょう。頑張れ父さんたち。

とはいえ、これはいずれも大手企業の話。ほとんどの人は中小企業勤務で、女性が育休を取るのもひと苦労です。男性がそんなことを言えばパタハラ(育児に関わろうとする男性が仕事上でいやがらせや不利益な扱いを受けること)をされることも。

まだ「男は仕事命!」という思い込みも根強いなかで、男性の育休取得義務化に向けて議連が立ち上がったのは空気を変える大きな一歩になると期待しています。

もしかしたら男の育児に反対する男性って、仕事を理由に家庭から目を背けている人なんじゃないかな。これを機に、自身も家族と向き合ってみては。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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