宇宙空間に大都市を築く壮大な計画。ベゾス氏は高校卒業式のスピーチですでに「スペースコロニーを造りたい」と語っていたという。 ※写真はイメージです

アマゾンの創業者でCEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾス氏は、5月9日に行なわれたイベントで月着陸船「ブルー・ムーン」の大型模型を公開し、2024年までに月面着陸を目指すと発表した。

「ベゾス氏が自ら、マスコミに向けて説明するのは初めてです」

と語るのは宇宙開発評論家の鳥嶋真也氏だ。

「ベゾス氏は『このままだと地球の資源は枯渇してしまう。人類が将来的に地球に住み続けるためには、地球外から資源を持ってこなければならない。宇宙では太陽光がエネルギーとして使えるし、小惑星には地球以上に鉱物がある。そのための宇宙進出』だというのです」

しかし、このタイミングでの発表には、別の大きな理由があった。

「今年3月、トランプ米大統領は『2024年までにアメリカの宇宙飛行士を再び月に立たせる』と明言しました。この発言で慌てたのはNASAなどの宇宙開発関係者です。これまでは、28年ぐらいをめどに月面着陸を予定していたのに、それが4年ほど前倒しになった。しかも、その時点で月面に着陸するためのロケットも宇宙船も持っていなかったのです」(鳥嶋氏)

そこに目をつけたのが、ベゾス氏だった。

「自分たちが開発しているブルー・ムーンを使えば、24年の月着陸は実現できるとアピールしたのです」(鳥嶋氏)

それだけではない。

「ベゾス氏は『われわれは月の探査ではなく、月の経済開発をする』と言っています。月に観測装置などの機器を送り込むたびにブルー・ムーンを使えばビジネスになる。さらに、将来的に月に人が滞在するようになれば、定期的に物資を配送する物流ビジネスが展開できるんです」(鳥嶋氏)

アマゾンのビジネスを宇宙にも展開するというのだ。

もうひとつ、今回の会見で話題になったのが宇宙空間に浮かぶ「スペースコロニー」を造るという発言だった。

「ガンダムに出てくるような、数千万人が暮らせるスペースコロニーを考えているようです。『自分の子供や孫の世代には実現できるよう、その基礎を造る。月着陸船などの宇宙開発もそのためのものだ』とも言っていました」(鳥嶋氏)

では、スペースコロニーの実現度はどれくらいのものなのか? 名古屋大学で天体物理学を研究している早川貴敬氏に聞いた。

「1990年代前半に『バイオスフィア2』という完全な閉鎖環境内に独自の生態系をつくって、そこで植物を育てたり、人間が住んだりする実験が行なわれました。結果は時間がたつと酸素量が減っていき、うまくいかなかった。しかし、生態系は大きければ大きいほど維持しやすいんです。

もし、ガンダムに出てくるような巨大なスペースコロニーを造れれば生態系を維持できる可能性は高い。宇宙線の問題もコロニーの中に大量の空気があればバリアとして機能するので、解決できます。

では、最大の問題は何かというとお金。誰がなんのために出すのか。もし、ベゾス氏が"個人的な趣味"で造るというのなら、意外と早くできる可能性もあります」

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