サンマは8月頃から北海道で水揚げが始まり、三陸沖、銚子沖と徐々に南下する

これまで8月解禁だったサンマ漁が、今年からいつでも取れるようになった。そこで5月にサンマ船が出港! 秋の味覚は、初夏の味覚に変わるのか!?

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■サンマが取れないのはサバとイワシのせい

「サンマといえば、秋の味覚」という常識が変わるかもしれない――。

というのも、今年3月に水産庁の省令が改正され、これまで8月から12月までしか操業できなかったサンマ漁が、いつでも漁に出られる通年操業になったからだ。

5月15日には、宮城県の気仙沼港などから、翌16日には北海道根室市の花咲港などから北太平洋の公海の漁場に向かってサンマ船が出港した。

では、なぜサンマ漁は通年操業になったのか? 水産庁の担当者が説明する。

「日本はこれまで8月から12月に日本列島に近づいてくるサンマを取っていました。しかし、ここ数年は日本に近づく群れが少なくなった。漁場が変わってしまったんです。

また、サンマは8月頃から群れをつくり始めるので、これまでは群れになったところを効率よく取っていましたが、最近は6月くらいから群れをつくり始めるようになった。それなら、8月から12月までという漁期を撤廃しようということになったんです」

そもそも、サンマはどのような生態の魚なのか? 水産研究・教育機構、東北区水産研究所の巣山 哲(すやま・さとし)氏に解説してもらった。

「サンマの分布域はすごく広く、南の産卵域で生まれて、北に泳いでいって餌をたくさん食べて、南に戻ってきて産卵します。そして、また北に泳いでいって老いて死ぬ。サンマの寿命は約2年と短く、私たちの食べているものは、丸1年を経過したサンマです」

最近はサンマの漁獲量が少なくなったと聞きましたが?

「サンマの水揚げ量を見ると、ここ数年は減っています。しかし、81、82年頃もそんなに多くないし、98、99年も落ち込んでいます。サンマは水温が低くなると数が減るといわれていて、海の周期的な環境の変化によって、数が増えたり減ったりします。

また、サンマは一生の間に数万個の卵を産み、そのなかの2匹が成魚に育てば数は変わりませんが、3匹残れば1.5倍になる。逆に1匹だと半減する。ちょっとした差ですが、卵をたくさん産む生物は、数の変動が大きいんです」

じゃあ、よくいわれている外国船の乱獲が影響しているというのは?

「それほど大きな影響はありません」

最近は、日本沿岸にサンマが近寄らなくなったと聞きましたが?

「その原因は、マイワシやサバが増えたからです。これらの魚は沿岸性が強く、近海にべったり寄っているので、サンマは近寄れず沖に行ってしまいます。それで漁場が遠くなったんです。

もうひとつの原因は、サンマは親潮(寒流)に沿って日本を南下するんですが、最近はその親潮が沖に向かって強く流れている。そのため、サンマが沖に行ったのではないかと考えられています」

■うまいサンマを食べるなら8月!

通年操業で、いつでも取れるようになったサンマですが、5月のサンマの味はどうなんですか?

「サンマは、5月から7月にかけて北の海のプランクトンをたくさん食べて、体が急激に大きくなり、脂もだんだんのってきます。そして、8月から9月にピークを迎え、その後は少しずつ痩せていくんです」

ということは、6、7月のサンマでもある程度は脂がのっていると?

「いや、6、7月のサンマは、見かけは太っているんですが、皮膚の下に脂がついているだけで、筋肉にはまだ脂が回っていません。ですから、食べると割とパサパサしています。やはり、8月、9月の脂がちゃんとのったサンマが一般的にはおいしいと思いますよ」

じゃあ、サンマの旬は夏ということですか?

「はい。ちなみに12月から2月くらいの一番脂が落ちている時期に、和歌山県などでは酢で締めて押しずしを作ります。その場合は、脂ののっていないほうがおいしいようです」

最後に、5月に取ったサンマはどうなるのか? 全国さんま棒受網漁業協同組合の大石浩平氏に聞いた。

「今、出漁している船は、缶詰用のサンマを取ってロシアの加工船に渡しています。日本に持ち帰るものではありません。ただ、別のグループの船がサンマを取りに行くという話があります。それでも、皆さんの食卓に上がるようなサンマが取れるかどうかは、わかりませんね」

やっぱり、うまいサンマを食べたいなら、8月まで待つしかないようだ。