安田氏のアカウントは凍結解除され、ツイッター社から「技術的ミスでした」とメールが届いた

6月1日、中国関連情報を発信するツイッターアカウントが一斉に凍結される事件が起きた。その数、実に1000以上。

"被害者"のひとり、ルポライターの安田峰俊(みねとし)氏が当時の様子を振り返る。

「5月30日に朝日放送の番組『正義のミカタ』の『天安門事件30周年』というコーナーを収録したのですが、その放送日である6月1日の朝、ツイッターで告知をしようとしたら『書き込めません』という表示が出ました。副アカウントを使っていろいろ調べてみると、『アメリカなど各国にいる中国の民主活動家のアカウントが大量に凍結されている』『安田峰俊のアカウントも凍結されている』ということがわかりました。

今、私のアカウント名は【安田峰俊『八九六四』第5回城山賞&第50回大宅賞W受賞】です。『八九六四』は私の著書名で、天安門事件が起きた1989年6月4日のことを指します。中国では、この事件について語ることも、この数字を口にすることもタブー。凍結の原因はこれしかないのでは、と疑心暗鬼になりました」

ただ、いくらタブーに触れられたくないからといって、中国政府が国外にいるユーザーのアカウントを凍結させられるものなのか?

アカウント凍結の仕組みについて、ITジャーナリストの三上 洋(よう)氏が解説する。

「ツイッター社は『コミュニティの健全化』を進めており、スパムアカウントや脅迫、差別、誹謗(ひぼう)中傷、ヘイトスピーチなどを取り締まっている。それに関連して、ここ2年ほどアカウント凍結の事例は増えています。

凍結には2パターンあり、ひとつは自動プログラムによるもの。『殺す』などの問題表現を探し出して凍結します。もうひとつは通報によるもの。ユーザーからの被害報告が複数件あると凍結されることがあります。

しかし、問題はどちらもチェックが杜撰(ずさん)なこと。前後の意味をまったく見ずにキーワードだけで凍結されたと思われる人がいますし、『みんなであいつのアカウントを凍結させようぜ』という"祭り"が起こり、複数の人から通報されたために大した理由もなく凍結されたと思われる例もあります」

今回の件でいえば、中国政府側がたくさんのアカウントを作り、気に食わないアカウントを片っ端から通報して凍結させることも可能?

「ツイッター側は否定していますが、一斉凍結の理由はほかに考えられません」(三上氏)

では、今後もこうした理不尽な凍結事例は続く可能性があるということ?

「ツイッター日本法人の社長に凍結の杜撰さについて聞きましたが、『申し訳ない。改善する』と言うだけ。あまり期待できません」(三上氏)

この杜撰さがあだとなり、一時的とはいえ中国の"言論統制"に手を貸してしまったツイッター。前出の安田氏はこう指摘する。

「今回わかったのは、ツイッターというプラットフォームはとても脆弱(ぜいじゃく)だということ。凍結が怖いからと、体制や大企業などに対する批判的な発言が萎縮していくのはとても怖いことだと思います」

本当にひどいアカウントの凍結は必要なのだろうが、もう少しちゃんとチェックできる仕組みを構築してほしい。