『報道ステーション』の徳永有美アナに、『news zero』の有働由美子アナ、『news23』の小川彩佳アナ。夜のニュースはこぞって女性キャスターをMCに据えているが、視聴率との関連性は?
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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どうも。毎度のことながら「女子アナ」なるワードが絶滅すればいいと思っている小島です。夜のニュース番組のメインキャスターがそろって女性なのは素晴らしいことだけれど、いいかげん番組の視聴率の良しあしを女性キャスターのせいにするのはやめたらいかがか。
すでにライターの高堀冬彦氏や次世代メディア研究所代表の鈴木祐司氏らが指摘しているように、キャスターを代えても数字にほとんど影響は出ない。つまり視聴者はキャスターの好き嫌いではなく番組の中身を見ていることがわかっています。
なぜゴシップでは女性キャスターの人気やスタッフの好感度や容姿ばかりが注目されるのでしょう。
女性の現役局アナや元局アナの皆さんとの浅からぬ親交を通じてつくづく思うのは、彼女たちのポテンシャルの高さと知性とやる気の最大の阻害要因は、テレビ業界およびその周辺に根深く残る性差別だということ。当人たちは「女子アナ」という扱いに強い抵抗を感じているのです。意外でしょ。信じられないという人もいるかもね。
女子アナは一見清楚(せいそ)でお利口さんだけど本当はあざといヤリマンであってほしいという少なからぬ方々の願望は当人たちもとっくにわかっていますし、深く傷ついています。女性蔑視とミソジニー(女性嫌悪)を絵に描いたような先入観ですから。
女子アナというコンテンツは30年かけて週刊誌やスポーツ紙でつくり上げられた定番商品、もはや完全にセクハラかつ性差別の塊で時代遅れなのに、執拗(しつよう)にネタにするところを見るとよほど固定客がいるようですね。
1980年代末にフジテレビで発明された「女子アナ」なる商品は、男女雇用機会均等法の施行を経て、フジテレビの女性契約社員の正社員化に伴って生まれたといわれています。
30年を経てもなお生き残っている、このいかにもオヤジ的発想の産物が、やる気のある若い女性アナウンサーたちを絶望させ、疲弊させていることはほとんど知られていません。むしろ当人たちも喜んでいると考える人が多いのでは。
関係者が就活のアナウンサー人気が落ちていると嘆くのも当然です。まともなジェンダー感覚を持った若者はやりたがるはずがありません。
今どき「数字を持っている女子アナ」「一緒に仕事をしたい女子アナ」ってな記事ではしゃいでいるのはスポーツ紙や男性向け週刊誌、そしてテレビ局の一部の旧態依然とした価値観の人々だけでしょう。世間はニュース番組は中身で勝負してくれと思っています。
視聴率に一喜一憂せず、メインキャスターの重責を担う彼女たちの志と努力に報いるだけの骨太な報道番組を目指してほしいと心底思います。女性はお飾りじゃないのですから。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中