6月18日、フェイスブック(以下、FB)が独自の仮想通貨「Libra Coin(以下、リブラ)」の構想を発表すると、アメリカでは大騒ぎに。日本でもツイッターのトレンドに「仮想通貨」という単語が上がり、新聞をはじめとした各メディアもこれを大々的に取り上げた。
リブラはなぜこれほど話題になったのだろうか。その疑問を、『仮想通貨1年生の教科書』(扶桑社)の著者であるポイン氏にぶつけた。
「まずはFBが主導している点が挙げられるでしょう。FBは、インスタグラムやメッセンジャーなど多くのサービスをグローバルに展開しています。これらのサービスを合わせると、全世界の月間アクティブユーザーはなんと約22億人にも及びます。リブラがこのサービス内で使われるだけで、世界のどの法定通貨よりも巨大な経済圏を持つ通貨ということになります」
22億人! これだけでも十分多く感じるが、リブラはもっと多くの人に広がる可能性もあるようだ。
「リブラのブロックチェーンを運営・管理する『Libra協会』には、FBだけでなくマスターカードやUber(ウーバー)などのグローバル企業20社以上が名を連ねています。これほどの大企業が連合して発行・管理する仮想通貨はほかにありませんし、おのおののサービス内で利用されればさらにユーザー数は増えることになりますね」
とはいうものの、ビットコインなどの仮想通貨はボラティリティ(価格変動性)が大きすぎて、決済に使うのは難しいといわれている。リブラは大丈夫なのだろうか?
「リブラは、ボラティリティが低い仮想通貨です。というのも、『Libra協会』が複数の法定通貨や国債などを保持することで、リブラの価値を裏づける仕組みをとっているからです」
決済利用だけでなく、リブラはさらなる可能性を秘めているという。ポイン氏は、リブラが普及した未来についてこう語る。
「仮想通貨はスマートフォンさえあれば世界のどこででも取引できます。劇的な変化としては、リブラの普及によって、銀行口座を持たない途上国の人たちがスマートフォンだけで資産管理や送金などの金融インフラを利用できるようになるでしょう。経済が不安定な国だと、自国の法定通貨とリブラを比較して、リブラのほうを受け取りたいと現地の人は思うようになるかもしれません」
途上国の法定通貨が駆逐され、リブラが使われる未来だってありえるわけだ。聞けば聞くほど壮大なモノに思えるが、そんな通貨が本当に実現するのだろうか。
「もちろん懸念もあります。FBは過去に個人情報流出事件を起こしており、リブラ利用者のプライバシーが守られるのか疑問視する声もあります。また、国境を超える点からマネーロンダリングおよびテロ資金供与対策も今後の課題です」
従来の仮想通貨とは違い、巨大なグローバル企業集団が普及を目指すリブラ。もしかしたら、世界中に普及する日が来るのかも?
●ポイン
仮想通貨投資家。著書に『仮想通貨1年生の教科書』(扶桑社)がある。ブログ『ポインの仮想通貨ハマって(中毒って)ます!!』では、仮想通貨に関する情報を発信している