大ニュースとなった、あおり運転殴打事件。人ごとではなく、被害者となる可能性は日常にけっこう潜んでいる。挑発に乗らず怒りを鎮める方法など上手な対処法をケースごとに学んでいこう!
■あおり被害者になる可能性はある!
社会的に大問題となった、あおり運転殴打事件。もし、自分があおり行為を受けた場合どう対応すればいいのか? 日本アンガーマネジメント協会代表理事・安藤俊介氏に聞いてみた。
「やみくもに反発するのではなく、自分の怒りの感情をコントロールする"アンガーマネジメント"の手法でうまく怒りを鎮めれば、多くはトラブルを回避できます」
さらに、中島宏樹法律事務所代表の弁護士・中島宏樹氏からはこんな話も。
「あおられただけだから......と泣き寝入りしなくても、場合によっては民事上、刑事上の責任を問うことができます」
いつ降りかかってくるかわからないあおり行為から自分の身を守るために、怒りの鎮め方や法的手続きなどさまざまなシーン別に対処法を学んでいこう!
■明日はわが身。あおり運転対処法
まずは毎日のようにニュースで耳にする、あおり運転の対処法をあらためて。
「右折待ちをしていたら後続車にずっとクラクションを鳴らされ続け、同乗していた5歳の娘が恐怖で泣いてしまった」
「初心者マークをつけていたからか、高速で明らかに車間距離を詰めてこられた。初めての出来事に焦ってブレーキを踏んでしまい、あわや大事故になるところだった」
これらのあおり運転はアンガーマネジメントの視点でどのように対処するべきか? 前出の安藤氏によると。
「直接会話ができない相手に対しての怒りは、そこから意識をそらすために目の前のものを細かく観察する"グラウンディング"を行ない、気持ちを素早く切り替えることが大切。窓の外の景色やほかの車に意識を向けましょう」
あまりに悪質な場合はどうすれば? 前出の中島氏に聞いた。
「道路交通法違反に問えるものもあります。これに該当するのは車間距離を必要以上に詰める"車間距離不保持"、クラクションを無駄に鳴らす"警音器使用制限違反"の2パターン。
これらが執拗(しつよう)に繰り返された場合、被害を増やさないためにもドライブレコーダーや動画で記録し、被害に遭った直後に警察に通報することが大切です」
さらに、こんなあおりも実際にあったという。
「車道を走っている自転車が蛇行して危なかったのでクラクションを鳴らしたら、その後、車体を蹴るそぶりを連発。そして、実際にその一発が車体にヒット。傷がついてしまった」
実被害が出ている状況だが、まずすべき対処法は?
「運転中に興奮するのは危険なので、怒りを鎮めることが先決。人の怒りは6秒たてば落ち着くといわれています。心の中でゆっくり6秒間数字を数える"カウントバック"を行ないクールダウンし、次の行動に移りましょう」(安藤氏)
この場合はさすがに相手から修理代を請求したい。いったん怒りを落ち着かせたら法的にすべきことは?
「まずは警察に被害に遭ったことの通報を行なって、被害の特定、加害者の特定を行なってください。目撃者の証言や車体の傷の写真は重要な証拠になります。また、一連の状況を証明するためにはレコーダーの映像も有用だと思います」(中島氏)
■まだまだたくさん! 日常のあおり対策
続いては、運転時以外にも潜んでいる日常のあおり行為について。
「スポーツ観戦中に相手チームのファンに『選手もファンも二流だな!』とヤジられた」
「路上キャッチを無視していたら『無視すんなよバーカ!』と暴言を吐かれた」
野球観戦のヤジといえば、最近、相手ファンからのヤジに激高し、自分の子供を投げつけ書類送検されたというとんでもないニュースがあったが......。不用意に大きなトラブルに発展しないためにはどうすれば?
「ヤジや暴言は"ゆがんだコミュニケーション"です。相手はイライラをやみくもな言葉で表しているだけで、こちらに非があるわけではありません。反応せずスルーすることが正解です」(安藤氏)
ちなみに、それでもしつこい場合は訴えられる?
「『二流だな』『バカ』などの言葉でも、公衆の面前で繰り返しヤジを飛ばしている場合は相手の社会的評価を下げたものとして侮辱罪に当たります。相手が発言している場面を動画に収めれば証拠になります。しつこいようであれば警察などに相談されることをお勧めします」(中島氏)
ほかには、体を使ってあおってくるケースも。
「通勤ラッシュ時、ドアの前で降りる人を待っていたら、早く乗り込めよと言わんばかりに肩をぶつけながら割り込んできた」
「満員電車でカバンが当たったことに腹が立ったのか、足を踏んで体重を乗せてケンカをあおってきた」
これらのイラッとする行為、どう対応すればよいのか。
「エスカレートする前にいったんその場を離れ、怒りの感情から自分を遠ざける"タイムアウト"を行ないましょう。電車だったら車両を変えるか、降りて一本後に乗るだけで、十分怒りは収まります」(安藤氏)
また、へたをすればケガをしかねないこれらの行為。訴えることはできる?
「明らかに故意で、そのせいで骨折などのケガをした場合は傷害罪、ケガがない場合でも暴行罪に当たりえますが、これらのケースは故意であるかの立証がなかなか難しいといえます」(中島氏)
耐えて勝つ......ではないが、割り切って自分を落ち着かせるほうがよさそうだ。