「あおられたときに怒りをうまく鎮める方法【前編】」では、運転時、路上、電車などであおられたときに挑発に乗らずに怒りを鎮める方法を学んだ。今回は、ネット、家庭、職場であおられたときの対処法を学んでいこう。
■ネット上でのあおりにも注意
もちろん現実世界だけでなく、SNSなどネット上でのあおりも大きな問題につながるケースがある。
「インスタグラムに彼女と行ったレストランの写真を上げたら、知らない人から『ここ、おいしくないですよね』と、コメントを書き込まれた」
ネットのあおりに対する怒りの鎮め方は?
「見えない相手に反論しても自分の思いどおりにはなりません。"呼吸リラクゼーション"といって4秒かけて息をゆっくり吸い、6秒かけてゆっくり吐ききる深呼吸をしましょう。心がリラックスし、反論しなくて済みます」(日本アンガーマネジメント協会代表理事・安藤俊介氏)
とはいえ、あまりにひどいコメントが続く場合はどうすれば?
「『ブス』『死ね』などの明らかな誹謗(ひぼう)中傷は人格権を侵害されたものとして慰謝料を請求することができます。相手が削除する前に当該コメントのスクリーンショットを撮っておきましょう。通常、コメントをした本人の特定には困難を伴いますので、専門の弁護士などに調査を依頼するとよいでしょう」(中島宏樹法律事務所代表の弁護士・中島宏樹氏)
■身近な人のあおりをなだめる方法
これまでは見ず知らずの人からのあおりに対して、自分の怒りの鎮め方を紹介してきたが、ここからは身近な人からのあおりのなだめ方について見ていこう。
「10kgのダイエットに成功したら、友人に『だいぶマシになったんじゃない?』と鼻で笑われた」
「妻から『○○さんはハワイ行くし、車も買い替えるんだって。あなたの稼ぎじゃ無理よね』と、プライドを傷つけるようなあおりをされた」
悔しさと怒りが込み上げてくるあおり! どうするのが正解?
「わかり合いたい相手からの挑発的な言動には、相手の目を見て冷静に『私』を主語にして感情を伝える"アサーティブコミュニケーション"を行ないましょう。『あなたはどうしてそういうことを言うの?』と、相手を主語にするのではなく、『"私"は十分頑張っている』と伝えることで、円滑にコミュニケーションを進めることができます」(安藤氏)
一方、家族からのあおりに対しては、ひと言つけ足すとより良好な関係性になると語るのは、『損する気づかい 得する気づかい』(ダイヤモンド社)の著者で人心掌握術に詳しいコラムニストの八嶋まなぶ氏。
「真に受けたり、反論せずに、『でも俺には○○(妻の名前)がいるからうれしいよ』と返答。妻の機嫌も直ってあおりもなくなるでしょう」
■ビジネスマンを悩ませる職場でのあおり
続いては、身近な人の中でも、より慎重な対応が求められる職場内でのあおり!
「期限までまだ3日ある資料を作成していると、上司から『まだ終わってなかったのか』と、早く終わらせるようにあおられた」
「期限はまだでは」と反論したくなるが、怒りを鎮める方法は?
「何をしてもダメ出しをされて心が乱れたときは"ポジティブセルフトーク"という手法で、元気が出る呪文を脳内で唱えると平常心が保てます。『これは成長するチャンス』『いつか見返す』など、あらかじめ自分を鼓舞する言葉を決めておきましょう」(安藤氏)
もちろんこの場合、上司との関係性をうまく保つ必要も。その対処法を前出の八嶋氏が教えてくれた。
「文句を言う上司は、実はアドバイスしたいだけの場合が多い。『仕事ぶりを細かく見てくれてありがとうございます。どうしたら早く作成できるか、教えていただけますか?』と、あおりを感謝で跳ね返し、弟子入りの姿勢を見せてください。上司も悪い顔はできません」
さらに、職場内でも言葉以外のあおりが。
「定時に帰ろうとすると、上司が不満そうな顔でこちらをじっと見て、無言の圧力をかけてくる。まだ働けとあおられている?」
はっきりしない分、気になって逆にイライラ! このあおりはどう対処すれば?
「本音を語らない相手には、なぜその態度を取るかではなく、未来に焦点を当てて『今後どうしてほしいか』を聞き出す"ソリューションフォーカストアプローチ"を行ないます。『帰ってはダメですか?』ではなく、『明日出社したら何をすればいいでしょうか?』と聞きましょう」(安藤氏)
続いては、飲み会でのあおりシーン。
「九州出身で下戸の自分。飲み会のたびに、同じ九州出身の上司から『酒も飲めないなんて九州男児として情けない』と、一気飲みをあおられる」
前出の八嶋氏はこんなかわし方を提唱する。
「大ジョッキでウーロン茶を用意し、『自分はウーロン茶でも酔えるのでこちらを全部一気します』と、その場を盛り上げる。お茶をがぶ飲みしているあなたを見て、相手も根負けしますよ」
では、そもそも職場でのこれらのあおり行為はパワハラとして訴えられないの?
「パワハラは、3つの要件を満たす必要があります。(1)優越的な関係に基づいて(2)業務の適正な範囲を超えて(3)身体的または精神的な苦痛を与えること。このいずれにも該当すれば損害賠償請求の対象となります」(中島氏)
これらのあおりは該当する?
「単発ではなく執拗に繰り返され、肉体的・精神的苦痛を伴っていればパワハラに該当しえます。飲み会の場合は帰りに一杯などプライベートなケースは認められにくいですが、歓送迎会や定例会など会社のイベントの場合は認められることがあります。録音・動画を証拠に、労働局などの相談窓口へ通告しましょう」(中島氏)
以上のような方法で自分や相手の怒りをうまく鎮め、大問題につながらないように注意しよう!