林間学校や野外学習の際に行なわれている「トーチトワリング」

秋といえば運動会、運動会といえば組体操。しかし、近年はその危険性に厳しい目が向けられ、縮小や廃止に向けた動きも多い。

だが、見ようによっては、組体操よりも危険な学校行事が愛知県にある。県内の小中学校を中心に、林間学校や野外学習の際に行なわれている「トーチトワリング」(別名「火の舞」)だ。

有志の生徒たちが先端に火がついた棒を両手に持ち、それを振り回す(!)団体パフォーマンスで、学校側はその意義を「火の美しさとともに危険さを体感する」などと説明しているが......。

この珍妙な風習の発祥は、1960年代、愛知県蒲郡(がまごおり)市のとあるキャンプ場。手筒花火の着火にインスピレーションを得て、トーチをXの字に振り回しながらキャンプファイヤーに点火したことがきっかけだ。

これに新体操のこん棒やポリネシアンのファイヤーダンスの要素を取り入れて学校行事として形を整え、70年代後半から多くの学校に広まり始めたという。

愛知県民に話を聞くと、

「放課後に練習し、本番が終われば有志間で味わう達成感もひとしお。林間学習のいい思い出だった」

といった前向きな思いを語る声も少なくない。しかし、一方で同県出身の本誌編集Mはこう言う。

「運動神経がいい"選ばれた人"のためのイベントです。自分は、本番当日は隅に座って、美しく燃える炎と感動を分かち合うイケてる同級生を眺めてました」

ともあれ、失敗すればどんな事故が起きるかはまさしく「火を見るより明らか」。今年7月には名古屋市守山区の中学校で、男子生徒が練習中に右腕手首から肘にかけて重いやけどを負った。

これを受け、同市教育委員会は火を使ったトーチトワリングを本年度は行なわないよう市立の小中高校に通知。安全対策として火を使わないケミカルライトを使ったトーチの普及も進んでいるが、来年度以降の対応については検討中だという。

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