今年10月下旬に発売されたAirPods Pro。たちまち大反響となり、一時は品薄状態に

今年10月下旬に発売され話題となった、Appleの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」。周囲の雑音を消すノイズキャンセリングモードと、逆に周囲の声を聞き取りやすくする外部音取り込みモードを搭載しているのが特徴だ。約3万円と決して安くはないが、それでも発売直後から絶賛の声が目立つ。

ガジェット評論家の山田 翔氏はこう語る。

「音質やノイズキャンセリングは従来のハイエンドイヤホンに匹敵する出来です。それに加えて、ユーザーにストレスを感じさせない快適な設計だと思いました。

接続の簡単さや電池の持続性も申し分ないですし、特に感動したのはiPhone側から通常モードとノイズキャンセリングモード、外部音取り込みモードを簡単に切り替えられること。散歩中やオフィスでの作業中にイヤホンをつけていても、困ることがなくなりました」

Appleのイヤホンというと、iPhoneに付属しているシンプルなイヤホンを想起する人も少なくないだろう。これはいわば"普通のイヤホン"だが、Appleはいつの間にAirPodsProのような高品質イヤホンを作れるようになった?

「Appleは2014年にアメリカのオーディオ機器メーカー、ビーツ・エレクトロニクスを買収しています。その技術力を引き継いだことで、ハイクオリティなノイズキャンセリングや外部音取り込み機能が実現したのでしょう」

3万円のイヤホンというと十分高級な部類に入るが、それでもAirPods Proのコスパの良さを指摘する声は少なくなく、前出の山田氏も「5万円払ってもいい出来」と太鼓判を押す。

そこで気になるのは、なぜAppleがいまさら本格イヤホンを比較的割安な価格で市場に投入したかだ。

「人の目はスマートフォンにかなりの時間を奪われていますが、耳について独占的なポジションにあるデバイスは現状ありません。そこでAppleはiPhoneと密に連携するイヤホンを引っ提げ、そのシェアを本格的に取りにきたのではないでしょうか」

人間の耳を押さえた先に実現するのは、何も音楽を聴くことだけではないという。

「実は、Appleは数年前からヘルスケア事業に注力しています。その一例がApple Watchで、心拍数や運動データ、海外のものでは心電図も記録できる。イヤホンのように耳に装着するデバイスなら、従来取れなかった体温や呼吸に関する情報も取得できるようになります」

つけているだけで健康異常がすぐ検知できるようになるかもしれないと!

「それだけではありません。外部音取り込みモードへスムーズに切り替えられますから、将来的には"常時耳に装着するアドバイザー"になるポテンシャルも秘めています。現在の位置情報と連携して道案内をしてくれたり、目の前のレストランの評価を教えてくれたり。

前述の健康データを利用して、『今日は運動不足なので、少し歩きましょう』などと提案をしてくれるようになるかもしれません」

人類が皆イヤホンを耳につけている未来は、そう遠くないのかも!?