今後数ヵ月続くとされるオーストラリアの大規模森林火災。オーストラリアのスコット・モリソン首相は同国が史上最も暑く乾燥した一年を終えたばかりであるにもかかわらず、気候変動と同国の極限環境条件の関連性を最小限に評価していると米紙ニューヨーク・タイムズが伝えている。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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「オーストラリアの森林火災の影響はないですか」といろんな方が心配してくれます。私の家族が暮らしている西オーストラリア州のパースは今回の火災からは遠く離れているので直接の影響はありませんが、夏の盛りは2月いっぱいまで続きますので油断はできません。
ニュースでは連日、前代未聞の被害が報じられ、言葉を失うばかりです。一日も早い鎮火と、被害に遭われた方々に迅速に支援が行き渡ることを願っています。
今回の森林火災は、気候危機のティッピングポイント(反応が連鎖的になり回復不可能になる時点)が近いともいわれている現在の地球で、深刻な事態が進行していることを示す現象だとみられています。
オーストラリア各地ですでに1000万ha(ヘクタール)以上、韓国の面積とほぼ同じ広さの森林が焼失し、なおも数ヵ月続くとみられる今回の森林火災。空が赤く染まり、都市部も煙に覆われました。
1月12日の時点で消防士を含む28人が死亡、2000軒近い家屋が焼失し、死んだ動物は10億匹以上。自然が元どおりになるのにはとてつもない時間がかかります。
オーストラリアでは、毎年夏になると各地で森林火災が起きます。原因は高温や干ばつや雷、そして火の不始末や放火などです。今回の火災の原因は地球温暖化を訴える活動家の放火によるものだというデマも流れました。消火活動に参加したボランティアの男性が放火で逮捕されてもいます。
問題は、何が原因で火がついたかということより、なぜそれが前例のない規模まで拡大したのかという点にあります。イギリスBBCの気象解説は、インド洋ダイポール現象と呼ばれる海水温の異常が大規模な干ばつと高温の主因で、加えて南極海に吹く強い西風が例年よりも北寄りになったことが被害を広げたとしています。
激しい干ばつが続く南オーストラリア州では、水を求めて野生のラクダの群れが先住民の居住地を襲い、空から射殺して駆除する事態になっています。
対応の遅れが批判されているスコット・モリソン豪首相は消火活動に3000人の予備役を投入し、復興局を新設。被害に遭った地域のインフラ整備や住民のメンタルヘルスのケアに注力すると発表しました。加えて温室効果ガス排出削減に取り組むと述べましたが、与党内でも意見が割れており、経済成長との両立も課題です。
日本はオーストラリアと並んで温室効果ガス排出削減への取り組みに消極的と国連から名指しされている国。昨年は台風15号と19号により大きな被害が出ました。自然災害と気候危機との関連を実感している人も多いはずです。両国の政治判断に世界が注目しています。これは決して人ごとではないのです。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中