出産後に元のポジションへの復帰を望む人の希望が叶えられるようにしてほしい

TBS系の報道番組『news23』でメインキャスターを務めるフリーの小川彩佳キャスターが2月28日、同番組の公式ツイッターで第1子を妊娠したことを発表。出産は今夏予定で、産後も同番組に復帰するとみられている。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと

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TBS系の『news23』のメインキャスターを務める小川彩佳さんが、現在妊娠中で夏頃に出産予定であると発表しました。TBSは、産休復帰後も引き続き小川さんにメインキャスターを続けてほしいと考えているとコメント。後進の女性キャスターにとって、心強い前例となりそうです。

3月8日の国際女性デーを機にメディアが横断的にジェンダー平等を訴えるキャンペーンに参加するなど、最近のTBSは放送局の中でもジェンダーに関する課題に力を入れている印象があります。

2018年には、博報堂などと合同で民放在京キー局で初めての事業所内保育所を設立。社員向けにジェンダーに関する表現についての研修なども行なっていると聞きます。

マスコミ業界は意思決定層に女性が少なく、人材の多様性に欠ける傾向があるので、こうした取り組みは重要です。テレビ業界全体で女性の登用を増やし、育児や介護と仕事との両立をしやすくして、男女共にいろいろな働き方ができるようになればいいですね。

昨年は、日本テレビの近野宏明記者がメインキャスターを務めるBSのニュース番組を1ヵ月間休んで育児に専念しました。これも良い前例となるでしょう。

今や出産を経て仕事を続けるアナウンサーやキャスターは珍しくありませんが、出産後に元のポジションへの復帰を望む人の希望が叶(かな)えられるようにしてほしいです。

職場の女性が妊娠すると「このタイミングで妊娠するなんて自覚が足りない」などと非難する人もいます。産休や育休で迷惑をかけるな、と。

でも子供を持つか持たないかは本人が決めること。妊娠は年齢との兼ね合いもあり、思ったとおりにコントロールできるものではありません。いつ誰が休んでも困らない制度を整えておくことが重要です。

就職活動のときに女子学生に、出産するつもりがあるかを執拗(しつよう)に聞くのも就活ハラスメントとして問題になっています。

小川さんは新キャスターに就任して1年少しで産休を取るわけですが、それについて批判するコメントもありました。まだ1年もたっていないのに、と。

これには偉大な先例があります。ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は2017年に37歳で野党・労働党の党首に就任した際、テレビ司会者に出産の予定について繰り返し尋ねられた際、「2017年にもなって女性がそんな質問に答えなければならないのはまったく容認できない」と述べ、その年に首相に就任。

それから数ヵ月後には現役の首相として6週間の産休を取り、復帰後も精力的に活動しています。

小川さんが良い前例となって、今後も女性キャスターたちが安心して出産し、復帰後も順調にキャリアを築くことができるようになりますように。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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