今後は、富裕層の観光客向けに超高級ブランドや贅沢品だけを集めたセレブ店舗と、デパ地下だけになっていくのでしょうか 今後は、富裕層の観光客向けに超高級ブランドや贅沢品だけを集めたセレブ店舗と、デパ地下だけになっていくのでしょうか

5月25日に開かれた新型コロナウイルス感染症に関する政府対策本部会合で、安倍首相が緊急事態宣言の全面解除を表明。今後は一定の移行期間を設け、社会経済活動のレベルを引き上げていく。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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世の中が動きを取り戻しつつあるなか、感染第2波、第3波への警戒を怠らずにいかに経済を回すかが重大テーマ。だけどこの巣ごもり期間中に、なくてもいいことに気づいてしまったものもたくさんあって、それはたいていコロナ危機以前から終わりが見えていたものなんですよね。

例えば、デパート。過去1年で、何回デパートで買い物しましたか。私は一度きりです。

振り返れば幼少時には、ちょっと贅沢(ぜいたく)気分で家族でデパートに行ったものでした。屋上のペットショップを見たり、遊園地で遊んだり、レストランに行ったり。

90年代には渋谷西武がやたら元気で、流行発信地というイメージがありました。金色のポイントカードも持っていたなあ。新宿伊勢丹もいつも混んでいて。当時はデパートで服を買うことも珍しくありませんでした。まだファストファッションもなかったし。

日本百貨店協会の統計によると、デパートの売り上げのピークは1991年。当時約300店舗もあったのが、2018年には約200店舗にまで減り、売上高もピーク時のおよそ6割の5兆8870億円に。

一方、外国人観光客の利用は見る見る増え、2011年には8135億円だった訪日外国人による消費は2018年には4兆5189億円!ってこれ、日本人ほとんど買ってないじゃん。

その流れは個人的にも鮮明に記憶しています。00年代の途中からデパートに中国の銀聯(ぎんれん)クレカのマークが出現して、これなんだろう?と思ったのもつかの間、10年代になると主要デパートや表参道などの観光スポットは買い物袋をいくつも提げたアジアからの観光客であふれ返り、10年代の終わりになると、中国語で接客をする店員さんが増えて、入るなり中国語で話しかけられたことも何度もあります。

高級ブランドのお店はどこも観光客ばかりで、80年代のバブルな日本人てこんな感じだったんだろうなあと外からまぶしく眺めるばかりです。

しかし、そこへ来てのコロナ危機。頼みの綱の外国人観光客が途絶えて、デパート業界の売り上げは軒並み7~8割減というすさまじい落ち込みようです。コロナが明けても、いつ観光客が戻るのか......。

今後は、富裕層の観光客向けに超高級ブランドや贅沢品だけを集めたセレブ店舗と、デパ地下だけになっていくのでしょうか。個人的には、地方のアンテナショップを集めて、全館を日本のおいしい食品で埋めた店舗を希望します。セレブ店舗でも、化粧品フロアだけは行くと思う。実物を見て決めたいから。

今後はオンライン店舗との併用なども進むでしょうから、デパートとの新しい付き合い方ができるのかも。まだ買い物気分にはなれないけど、新時代の幕開けに期待したいです。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。佐藤愛子との往復書簡集『人生論 あなたは酢ダコが好きか嫌いか 女二人の手紙のやりとり』(小学館)が好評発売中

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