感染した女性が接客した30人のうち、保健所は8人に連絡してPCR検査の受診を要請。幸いにも全員が陰性だった

6月26日、徳島市内の風俗店で働く20代の女性が新型コロナウイルスに感染していたことが発覚した。

同市内の別の風俗店経営者によると、その店は「個室で性的サービスを提供する店舗型ヘルスで、50分1万円という安さと、バニーガールのコスプレがウリの人気店だった」という(現在は休業中)。

徳島県によると、感染した女性は6月15日から1泊で大阪市に滞在し、ホストクラブを利用した。その後徳島に戻り、6月17日から店に出勤。3日後の20日に発熱などの症状が出たが、以後も勤務を続け、6月26日にPCR検査で感染が発覚した。

「新型コロナは発症2、3日前から感染性が出るとされ、このケースでは女性が出勤していた6月17日から25日に感染のリスクがありました。保健所の調査の結果、その間に接客した相手は30人だったことが判明。店の営業形態を踏まえれば、その30人は全員、濃厚接触者となります」(徳島県の担当者)

そして、保健所はこの30人のうち8人の連絡先を把握。「本人に電話で直接、行動履歴や身体の状態を確認し、PCR検査を受けるように促した」(県担当者)という。

なぜ、そんなことが可能だったのだろうか?

「接客した人数は店側への聞き取り調査でわかりました。店舗型の性風俗店では連絡先を伝えず利用できるケースが多く、通常は顧客の連絡先まではわかりませんが、今回は幸いにも一部の客の連絡先が店に登録されていました。詳細は明かせませんが、そのうち8人分の連絡先を店側から提供してもらうことができました」(県担当者)

連絡先の提供を求める際の法的な根拠はあるのか?

「保健所による濃厚接触者の追跡調査は、感染拡大を防ぐ目的で定められた感染症法15条に基づくものです。具体的な調査手法は厚生労働省が所管する国立感染症研究所が規定した『積極的疫学調査実施要領』に明記されていますが、5月末、この要領が改定されました。

それ以前は『無症状の濃厚接触者は検査の対象とはならない』とされていた点が、速やかに陽性者を発見する観点から『濃厚接触者はすべて検査対象にする』と変わったのです。

保健所が店などに顧客情報の提供を求める際、『どんな法的根拠が?』と指摘されることもありましたが、改定後は『国の規定に基づいて』と強く出られるようになった側面があります。調査の現場でそう伝えれば、店側も「協力しなきゃ」という形になりやすいでしょうから」(県担当者)

今回の件が「前例」となり、今後、感染発覚の場合はより積極的に店側が調査に協力する可能性は高い。前出の風俗店経営者もこう明かす。

「今回の感染事例発覚後、県から『顧客の連絡先の確認を徹底するように』と通達が来ました。これを受け、徳島の店舗型ヘルスやソープでは、連絡先を提示しない人の入店を断る店が増えています。ウチの店もお上に目をつけられたくないので、そうしました」

風俗店での効果的なコロナ封じ込め&追跡策として"徳島モデル"が全国に広がるかもしれない。最後に徳島県の保健所職員がこう話す。

「利用した風俗店で新型コロナに感染したと判明すれば、今度は同居する家族や職場の同僚が濃厚接触者となります。その場合、『勧告』という形で連絡先の提示を要請し、その方々にもこちらから連絡して検査を促すことになります」

店舗型風俗店の"匿名性"も、コロナ禍で変化を強いられることになりそうだ。