国内最大の歓楽街・歌舞伎町。約240店が軒を連ねるホストクラブから複数のクラスターが発生するなど、感染拡大の震源地に

東京都内の新型コロナの新規感染者数が7月に入って7日連続で100人を超えるなど、再び上昇に転じた。特に感染拡大が顕著なのが国内最大の"夜の街"、歌舞伎町を抱える新宿区だ。

同区のPCR検査スポット(国際医療研究センター)で確認された陽性者の数は4月9人、5月37人、6月226人と増え続け、7月は8日までの期間だけで249人と急増した。その理由について、新宿区保健所の職員がこう話す。

「夜の繁華街、特にホストクラブで感染が広がっていることが一因。歌舞伎町にあるホストクラブ十数店舗で感染が発覚し、感染者が出た店の全従業員に集団検査を行なっていますが、区の調査では会社員の陽性率が3.7%なのに対し、ホストクラブなど夜間の接客を伴う飲食業従事者の陽性率は30%を超えています。

その上、7月に入ると会社員や学生、無職者など、一般の方で陽性が出るケースが目に見えて増え、市中感染が広がり始めた印象です」

その対応を一手に担う新宿区保健所はパンク寸前だという。

「区内で陽性者がひとりでも出れば、それに付随する業務がドーンと発生します。それでも1日20~30人程度なら現状の態勢でも対応できますが、7月以降は1日100人近くの陽性者が出る日もあり、毎日が火の車状態。

都庁や新宿区役所から職員が応援に駆けつけてくれてはいますが、土日も関係なく毎日夜遅くまでフル稼働で働いても追いつかない。これはもう、災害時と同じような状況です」

こうしてコロナ対応に忙殺され、HIV検査を一時的に停止せざるをえなくなるなど、すでにほかの業務にも支障が出ているのだという。

さらに追い打ちをかけるように、新宿の劇場「シアターモリエール」での集団感染が発生。15日現在、出演者や観客ら少なくとも45人の感染が発覚し、約850人が濃厚接触者に指定されたが......。

「その件は特に影響ありません。劇場の所在地は新宿区ですが、公演を主催したのは区外の事業者。この場合、陽性者や濃厚接触者への対応業務は事業所の所在地にある保健所の担当になるんです。正直、ホッとしました......」

まさに綱渡り状態だ。

都内の別の保健所に勤務する職員がこう話す。

「渋谷や池袋にも繁華街はありますが、歌舞伎町はあれだけ狭いエリアに雑居ビルが林立し、そこに6000軒もの飲食店が密集しているわけですから、やはり異質。ホストクラブも池袋は10店程度ですが、歌舞伎町には240店もあり、そこからクラスターが複数発生しています。

もし感染発覚者が区外に住んでいれば、居住地の保健所が入院先の確保や行動調査といった感染者対応を担当することになるのですが、歌舞伎町の"夜の店"で働く人たちは勤め先の近所に住んでいるケースが多く、新宿区保健所に業務が集中しやすい。

また、本来なら感染者ひとりに保健師ひとりが対応する形が望ましいのですが、新宿区保健所には保健師が20人程度しかいません。これでは人手不足に陥るのも当然です」

近隣の保健所から保健師がヘルプに行くことはないのか。

「実は、保健所同士の横のつながりは皆無。都庁や区役所から職員が応援に行くことはありますが、その多くは事務職員で、専門性の高い感染者対応を任せるのは難しい。そこは都が率先して体制を構築すべきだとは思います」

医療体制の逼迫(ひっぱく)を防ぐことはもちろんだが、感染拡大を食い止める意味で、クラスター発生地の保健所のパンクを防ぐ対策も急務だ。