2019年4月以降、性暴力に抗議する「フラワーデモ」などの社会運動も広がりを見せ、今年に入り刑法改正のための検討会がすでに数回開催されている。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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つい3年前まで、日本では明治時代に作られた法律が使われていました。1907年に制定されたまま、110年間変わらなかったのです。それは性犯罪に関する刑法。驚きですね。
もっと性暴力被害者を守り、加害者に厳しい内容に変えるべきだという市民の声を受けて、2017年に刑法が改正され、性暴力に関してより厳しく罪に問える内容になりました。
しかしそれでもまだ、明治時代の名残はなくなりませんでした。強制性交等罪においては加害者による暴行・脅迫があったか、準強制性交等罪においては被害者が心神喪失・抗拒不能であったかどうかを立証できなければ、加害者を罪に問うことができないのです。
つまり、暴力を振るわれたり脅迫されたりしたのでなければ、同意のない性交を性暴力として訴えることができず、被害者が気を失っていたり意識もうろうとしていたりするなどして、抗(あらが)うことが不可能であったのでなければ、加害者を罪に問うことができないのです。
ここで蔑(ないがし)ろにされているのは「本人が性行為を望んでいなかった」という事実です。たとえ望んでいなくても、これらの条件が立証できなければ泣き寝入りするしかありません。実際、こうした条件があるために、警察に寄せられた性暴力被害のうち6割が不起訴となっています。
また、長年にわたる家庭内の性虐待などで逃げることができず、加害者に経済的に依存している場合などもこうした条件が足かせとなって加害者を罪に問うことができないケースもあります。
2017年の法改正の時点で、こうしたいくつかの懸案事項については2020年に見直しを行なうことになっていました。今年がその年です。今まさに見直しがなされるかどうかを法務省で審議しています。市民の声を届けることが重要です。
イギリス、ドイツなど諸外国では本人の同意がなかったことをもって性犯罪が成立する法律になっています。NO means NO(イヤはイヤだ)、相手が同意していなければそれは性暴力なのです。スウェーデンではさらに踏み込んで、明確な同意の確認をすることが重視されています。
日本でも今回の見直しで先述の諸条件をなくし、同意がない性行為が性暴力とされるようにしてほしいと今多くの人が声を上げています。「性的同意」は日本ではほとんど知られていませんが、加害者にならないためにも、ぜひ知っておきましょう。
いかなる性的な接触も、本人の同意がなければ性暴力です。セクシーな服を着ていたとか、誘っている感じがしたとかいうのは「性行為に同意している」ことになりません。まして「いやよいやよも好きのうち」と考えての性行為は紛れもない暴力。法律と同時に意識も見直さなければならないときに来ています。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。『曼荼羅家族「もしかしてVERY失格!?」完結編』(光文社)が好評発売中