直接の知り合いにはいなくても、「知り合いの知り合い」が新型コロナウイルスに感染した、という読者は少なくないだろうし、そうしたケースは今後さらに増えるはず。これを読めば"濃厚接触者と接触"の際のガイドラインがわかります!

■基本的に企業や個人の判断にお任せ

爆笑問題の田中裕二さんや乃木坂46のメンバーが感染するなど、新型コロナウイルスはゆっくりと広がりを見せている。こうなると自分の身近にいつ感染者が出てもおかしくない。

そして身近に感染者が出た場合、自分が濃厚接触者になるかどうかが気になるところ。

厚生労働省の「新型コロナウイルスに関するQ&A」によると、濃厚接触者にあたるかどうかは「対面で1m程度以内で15分以上接触があった場合」「感染者からうつる可能性がある期間(発症2日前から入院等をした日まで)に接触のあった方々について、保健所が調査を行ない判断する」とのこと。

原則的に濃厚接触者は(PCRなどの)検査をして、陰性の場合でも感染者と接触した後14日間は健康に注意を払い、不要不急の外出を控えること(自宅待機など)を要請される。

では、さらにその濃厚接触者と自分が接触をしていたらどうすべきなのか?

例えば、取引先の担当者Aさんの奥さんがコロナに感染した。すると旦那さんであるAさんは濃厚接触者となる。自分はそのAさんと3日前に対面で30分ほど1m以内の距離で打ち合わせをしていた。どのような行動を取ったらいいのか?

東京都福祉保健局の担当者に聞くと......。

「現在、濃厚接触者との接触に関するガイドラインはありません。感染者に接触した場合のみです。ですから、基本的に普通の方と変わりません。

ただ、濃厚接触者の方がいつ発症するかわかりませんので、濃厚接触者の方の健康状態を2週間ほど気にかけていただく必要はあります。

そして、なるべく人混みを避けていただいたり、出勤を控えていただくという"お願い"をするだけです。

ですから、基本的に濃厚接触者に接触した方の対応は、企業や個人の判断にお任せすることになります」

人混みを避けるくらいで、普通の人と変わりない行動を取れるならそれほど気にすることはないのだが、一応、企業はどのような対応を取っているのか調べてみた。

■中小企業は「注意喚起」程度

以下は、社員数1000人以上のある企業の新型コロナウイルス感染症に関する出勤対応だ。

濃厚接触者(①)は「保健所の指示に従ってPCR検査を行なう。陰性でも2週間の在宅勤務または自宅待機」。これは当然だが、濃厚接触者の濃厚接触者(③)も「①の検査結果が出るまで在宅勤務または自宅待機」となっている。さらに濃厚接触者の濃厚接触者の濃厚接触者(④)も「①のPCR検査結果が出るまで在宅勤務を推奨」されているのだ。

これは、かなり厳しい対応のような気もするが、どうなのだろう。産業医の大室正志氏に聞いた。

「大企業は、これくらい厳しめの対応をしている会社が多いですね。というのも大企業は出勤する社員が3割くらいに抑えられているため、濃厚接触者になるケースが少ないからです。

一方で原則出勤の中小企業がこれくらい厳しい対応をすると働く人がいなくなってしまいます。ですから『濃厚接触者の濃厚接触者』は、注意喚起程度で終わっているでしょう。

また『濃厚接触者の濃厚接触者』に自宅待機を命じると賃金が発生しますし、国からの補償などももらえません。在宅勤務できる職種であれば働いてもらえますが、接客や運送、倉庫管理などは在宅勤務は難しい。ですから、簡単に『自宅待機』とは言えないのです。

本来は、接客など不特定多数と接する仕事は感染リスクが高いので、より厳しい対応をしなければいけないのですが、賃金発生の問題が出てくるので逆転現象が起きています。

しかも、厳しくするということは保健所が『感染者の発症2日前までに接触のあった人』と規定しているところを、例えば3日前までの人にもPCR検査を受けさせるということにする。

すると公費で検査は受けられないので、ひとり3万円ほどの検査代を会社が出すわけです。普通の企業は、なかなかそこまで負担できませんよ」

感染拡大を防止するためには当然、厳しい対応が望まれるが、現実はなかなか難しいようだ。

「厳しい対応をすると莫大(ばくだい)なお金がかかってしまう。そのため、一般の企業は保健所の規定どおりに対応することになります。ただ『制度はドライに、運用はウエットに』という言葉があるのですが、社員の中には『うちは高齢者と同居しているので不安なんです』と相談にやって来る人がいます。

そんなときは『そういう事情なら特例ということでPCR検査をやりましょう』と企業が費用を負担してあげる。これが現実的な対応だと思います」

結論として、もし自分が濃厚接触者と接触していたら、「1、濃厚接触者のPCR検査の結果が出るまで、在宅勤務できるのならば在宅勤務をする」「2、在宅勤務できない職種ならば、マスク、アルコールによる手指消毒など、感染症予防対策を徹底して仕事をし、できるだけ人混みを避ける」「3、どうしても不安だったら、会社に相談してみる」というのが一般的なガイドラインになりそうだ。

いつまでコロナ禍が続くのかわからないモヤモヤした状況だからこそ、身近で濃厚接触者が出たときの対応は、しっかりとしておきたい。