■名字をデジタル化してアーカイブ
不要論に揺れる、ハンコ業界。そんなハンコと密接な関係なのが、ハンコに彫られる名字の存在。佐藤、鈴木、高橋、田中、伊藤といったメジャー級の名字から超珍名に至るまで、日本には約30万種の名字があるともいわれている。そんな全国の名字に関する情報を網羅しているサイトが『名字由来net』だ。
ほかに類を見ないユニークなサービスだが、なぜ名字に着目したのか。実は誕生のきっかけは、東日本大震災だったとか。名字由来netを運営する、株式会社リクスタの広報担当者はこう話す。
「10年前の東日本大震災では、人命だけでなく、紙で残されていた家系図や家族の歴史など、多くの情報も失われました。それら大切な情報を子孫に残すべく、弊社は2011年にサイトを立ち上げました。以降、日本文化のデジタル化に取り組み続けてきました」
どうやって全国の名字をリサーチしているのか。
「名字や家系調査の専門家を中心に、名字情報をはじめ、日本の歴史・郷土史を含めた貴重な参考文献や古文書を洗い出し、地道な調査を重ねております」
こうして集められたデータが、このサイトには膨大に蓄積されている。試しに「田中」という名字を検索してみると、「全国順位4位」「全国人数およそ133万人」という数値だけでなく、田中が多いエリアの分布に名字の由来解説、さらに田中にまつわるコラムや、名字が田中の有名人をアクセスランキング順にリスト化。これは見ているだけで楽しめる。
「名字の分布は、専門家の調査以外に、全国の電話帳や総務省発表のデータなどから、弊社独自の手法により全国人数や地域ごとの人数を算出しています。加えて、サービス開始当初よりユーザーさまが自由に情報を追加・編集できる仕組みがあり、多いときには数百件という新たな情報が日々寄せられています。
実際、これまで約30万種の名字をすべて完璧に網羅した文献や資料は国内に存在していませんでしたが、日本で唯一、弊社が専門的に名字の調査を続け、日本の全人口の99.04%(2020年10月現在)を掲載する、国内最大の"名字の百科事典サイト"になりました」
まさに"名字界のウィキペディア"とも呼ぶべきメガサイトだが、ほかの業務内容は?
「名字に関連した姉妹サイトで国内最大の家紋百科事典サイト『家紋ドットネット』や日本最大のデジタル家系図『みんなの家系図』をはじめ、全国の神社・寺の検索や参拝記録を残せる『神社がいいね』『お寺がいいね』など、日本文化にまつわるサイトも多数運営しております。
なかでも、専門家が調査し、数百名規模の膨大な家系記録を構築する『名字由来net 家系図作成サービス』はお客さまの要望も多く、こうした地道な業務も日々行なっております」
今後の展望は?
「弊社のサイトは海外の方からの関心も高く、最近では『家紋ドットネット』の英語版の展開も行なっています。今後も世界中の方々に日本の伝統文化を気軽に楽しんでいただけたらと思います」
自分の名字を検索してみたくなること間違いなしの名字由来net。ぜひ一度ルーツなどを確認してみてはどうだろうか。もしかしたら新たな発見があるかもしれない。