現在、火口が明るく光る「火映」が確認されている十勝岳(写真は2012年撮影のもの)

鹿児島県の屋久島(やくしま)と奄美大島(あまみおおしまの間にあるトカラ列島周辺で、4日間(4月9日~12日)に震度4が4回、震度3が15回、震度1が200回を超える群発地震が発生。気象庁は「今後も揺れが続く恐れがある」と注意を呼びかけている。

トカラ列島は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界面に当たる海溝である「南海トラフ」のすぐ西に位置する。この群発地震は、もしや南海トラフ巨大地震の予兆ではないのか?

災害史に詳しい立命館大学の高橋学教授(災害リスクマネジメント)に聞いた。

「トカラ列島付近の群発地震は特に珍しいことではなく、しばしば起きている現象です。似たような群発地震は伊豆大島や新島付近でも起きていますが、基本的に大地震につながるようなものではありません」

では、安心していい?

「いえ、トカラ列島の群発地震の報道ばかりに目を奪われがちですが、この1、2ヵ月の間、実は日本各地で地震が多発しているんです。

例えば、北海道ではトカラ列島の群発地震と同じ時期、4月5日から11日の間に、根室や内陸部で震度3までの地震が8回も起きています。また、十勝岳(とかちだけ)では火口付近のガスや硫黄が燃焼する『火映(かえい)』が確認されています。

本州の真ん中に位置する静岡県と愛知県でも、3月27日から4月5日までの10日間に震度3の地震が2回、震度2の地震が1回ありました。

また西日本でも、和歌山で3月15日に震度5弱の地震が1回、震度3が2回、震度1が6回。2月15日には、震度4の地震が1回、震度2が5回、震度1が7回ありました。さらに、宮崎県の日向灘(ひゅうがなだ)や沖縄県の宮古島(みやこじま)でも、大きくはないものの最近は顕著に地震が増えています」

北海道から九州・沖縄まで、あちこちで地震が増えている......。その意味することは?

「トカラ列島付近で起きている地震よりも、むしろ北海道の内陸部、静岡や愛知、和歌山や宮崎で起きている地震のほうに注意を向ける必要があります。これらの地域の地震は、太平洋プレートやユーラシアプレートが跳ね上がることで大きな津波を起こす地震につながる可能性が極めて高いのです」

さらに、最近では南海トラフ地震につながるような"兆候"も見られるという。

「瀬戸内海の紀伊水道では、数年前までは震源の深さが10㎞ほどの地震が多かったのですが、最近は震源が深さ40~50㎞くらいの地震も増えてきました。

これは、震源がプレートの境界線に近づいてきているということ。そうなると、国の想定する南海トラフよりも広い範囲でマグニチュード8~9クラスの海溝型地震が発生する時期も近づいている可能性があります。その巨大地震は明日、発生してもおかしくありません」

近い将来、必ず起きるといわれている巨大地震。世界でも類を見ない地震だらけの島国に住んでいる以上、全国どこにいても防災意識は忘れないようにしたい。