配達員向けの案内板に並ぶ25店名のうち「専門店」とつくものが12店も。実際にはどの店の注文も同じ厨房で調理され配達される

デリバリー需要がコロナ禍で急増するのに伴って、イートイン設備(客席)を持たずネット注文に対する配達のみで営業を行なう「ゴーストレストラン」が増えている。フードジャーナリスト・はんつ遠藤氏はこう分析する。

「デリバリー専門のゴーストレストランは厨房(ちゅうぼう)さえあれば始められます。イートインスペースがいらない分、初期費用も人件費も安く抑えられるため始めるハードルが低く、アパートやマンションの一室で営業するお店まで出てきています」

なかでも、実際にはひとつの調理拠点でありながら、アプリ上では違うジャンルのいくつもの店名を掲げている"メガ・ゴーストレストラン"が増殖中だという。都内でデリバリーアプリの配達員をする男性はこう証言する。

「最近は、2回に1回はそういう店からデリバリーするくらい多いです。アプリで示される店名と、実際に商品をピックアップする際に目にする店名が異なるので、配達員の画面には『実際の店名は○○です』と表示されます」

試しに『週刊プレイボーイ』本誌記者もデリバリーアプリで検索してみたところ、唐揚げ専門店やマグロ丼専門店など複数のお店が登録されている住所を発見!

実際に行ってみると、そこにはありふれた居酒屋チェーン店があった。しかし、お昼時にもかかわらずイートイン営業はしておらず、デリバリーかテイクアウトのみで販売しているようだ。

「ほとんどのメガ・ゴーストレストランの正体は居酒屋でしょう。居酒屋にはポテトや唐揚げを調理するためのフライヤーが必ずあるので、韓国チキンや唐揚げのデリバリー専門店のフランチャイズの話が持ちかけられるんです。

また、大型の冷蔵庫や冷凍庫、十分な数のコンロもあるのでさまざまなフランチャイズを同時進行で手がけやすい。副業的な気持ちで片手間でできるフランチャイズに加盟していった結果、数十店舗の名前が連なるに至ったのだと思います」(前出・遠藤氏)

こうしたメガ・ゴーストレストランは、特に酒類の提供禁止が要請されている都府県で増えているようだ。

「この注文が来たらこの袋を調理してこの箱に入れる、といった効率的なシステムが組まれているので廃棄も少ないし、自分で仕入れる手間もない。ブランド力のある店名でアプリ内に掲載できるため、宣伝も特に必要ない。加盟したがる居酒屋は多いと聞いています」(遠藤氏)

なかにはなんと25店舗(!)もの店名でアプリに登録している居酒屋まで。しかし、実際には複数のお店を内包しているのに「専門店」とうたうのは問題にはならないのだろうか?

「景品表示法に違反する可能性はありますが、先ほども言ったように、基本的には同じ材料で同じ味つけなので味に大差はありません。強いて言えば、調理過程の火力の強弱で多少の差が出る程度。ファミリーレストランが全国で同じ味を提供しているのと同じ仕組みなので、そこまで問題はないと思います」(遠藤氏)

朝までお酒が飲める日が来るまで、メガ・ゴーストレストランはまだまだ増える?