アート写真がNFT作品としてオークション販売されることになった三上悠亜 アート写真がNFT作品としてオークション販売されることになった三上悠亜
先日、セクシー女優の三上悠亜を撮影したアート写真が、「NFT作品」としてオークション販売されることが判明した。しかも、そのオークションの模様はインターネットテレビ「ABEMA」の番組で生放送もされるという。いったい、どういうことなのか。

そもそも「NFT」とは何か? 正式名称は「Non-Fungible Token」といい、直訳すると「代替不可能なしるし」となる。暗号通貨などに使われるブロックチェーンの技術を活用し、デジタルデータに固有のIDなどの情報を付与することで、それを唯一無二のものとして証明できるようにするものだ。

NFTが日本で最初に大きな注目を集めたのは、今年3月に行われたオークションでのこと。Twitter共同創業者のジャック・ドーシーが投稿した"世界初のつぶやき"に、約3億円の金額が付いた。その後も、アメリカの有名アーティスト、ビープルのデジタルアートに約75億円もの金額が付くなど、センセーショナルな話題が続いた。

アート作品ならまだしも、単なるTwitterのつぶやきに、どうして億単位の金額が付くのかと疑問を感じるかもしれない。まさにそれを実現したのが、実物のないデジタルデータに価値をつけることを可能にする、NFTなのだ。

というのも、デジタルデータの利便性は、誰でも簡単にコピーができるところにあるのだが、それは反面、違法コピーや改ざんがやりやすく、モノとしての価値をもたせることを困難にもしていた。先ほどの"世界初のつぶやき"で言えば、そのデータが本当に"世界初のつぶやき"そのものなのか証明する手段がなかったのである。

しかし、NFTはこの問題を解決した。

まず、NFTはビットコインなどの暗号通貨と同じく、ブロックチェーン上で発行・流通される。ブロックチェーンは参加者の相互検証によって運営されるため、もし誰かがデータを改ざんしても、すぐに別の参加者が持っているデータと照らし合わされ、改ざんしたことがバレる仕組みとなっている。

この基本的な仕組みを「デジタルの証明書」として応用したのがNFTだ。

作成年月日や識別番号など、そのデジタルデータの来歴を示す情報を、改ざん困難なブロックチェーン上で管理し、データそのものと紐づくようにする。そうすると、コピー可能なデジタルデータに対して、「証明書の有無」を基準にオリジナルなものであるかどうか見極めることができるようになる。

つまり、ジャック・ドーシーの"世界初のつぶやき"に3億円もの価格が付いたのは、それがNFTによって「本人お墨付きの鑑定書が付いたデジタルデータ」として発行できるようになり、唯一無二の歴史的なデータとして扱うことができたからなのだ。

これが実物のないデジタルデータに価値が付くNFTのカラクリである。このような特徴があるNFTは、特にアーティストやクリエイターたちから歓迎されている。

これまで価値が付きにくかったデジタルデータが、固有のモノとして取り引きできるようになるだけでなく、作品の購入歴も常にブロックチェーン上で可視化されるため、作品が転売されるたびに手数料や著作権収入など、一定の利益が作者に入るような販売条件にすることもできるからだ。

また、音楽や絵画、映像といったコンテンツの売買だけでなく、電子チケットの転売対策としてもNFTは期待されている。購入者情報をチケットのデータと紐付けておけば、実際に購入した人がチケットを使用するのかどうか、容易に区別できるようになる。この点もエンタメ産業にとっては大きなメリットだろう。

とはいえ、まだまだ注意すべき点もある。取引が基本的に仮想通貨で行われているため、レートの乱高下に作品の資産価値が左右されやすい点や、日本も含め各国の法整備が追いついておらず、税金の扱いがどうなるのか不透明な点など、懸念すべきところも多い。それでもこれだけ注目されているのは、デメリットを上回るほどの可能性を世界中の人がNFTに感じているからだろう。

さて、そんなNFTになぜセクシー女優である三上悠亜が取り組むことになったのか。

今回オークションにかけられるNFT作品は28点。全体のディレクションは、クリエイティブ・ディレクターの秋山具義(あきやま・ぐぎ)氏。撮影はカメラマンのキクマヤスナリ氏が担当し、三上の誕生日である8月16日に撮り下ろした写真を、デジタルアートとして販売する。

広告などさまざまなクリエイティブ領域に関わるクリエイターたちが作品を手掛けることで、グラビアで見せる姿とは違った三上の魅力を引き出しているほか、制作した日時をデジタルデータに署名できるNFTの特性を活かし、「誕生日に撮影した唯一の作品群」としても希少価値を生む狙いがある。

そして、10月8日(金)にABEMAで生放送される番組(番組名未定)では、この作品のオークションの模様を、視聴者が三上と一緒に見守る。それがこの企画の全体像だ。

実は、最初のきっかけは番組側からのアプローチだったという。同番組のプロデューサーであり、「株式会社AbemaTV」PPV本部長の藤井琢倫氏はこう語る。

「コロナ禍によってエンタメ産業は大きなダメージを受けました。そこでABEMAとしても、エンタメ産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化を進めることで新しいビジネスモデルを構築する必要があると感じ、オンラインライブのペイパービューなどをスタートさせてきました。NFTを番組で扱うことにしたのも、そのようなデジタルを活用した支援の一環です。

ただ正直、日本ではNFTの市場はまだ発展途上で、ようやく存在そのものを知ったという人も多い。一方、グローバルでは、すでに大きな金額が動く市場ができあがっています。そこでアジアで人気のある方にご協力いただければと思い、SNSの総フォロワー数が世界で750万人にも及ぶ、三上悠亜さんに声をかけさせていただいたのです」

三上悠亜は今年6月、主に中華圏に向けたNFTオークションに参加。自身の限定写真を作品として販売し、約700万円を集めた実績もある。三上の事務所関係者もこう語る。

「ここ数年、中国や台湾では空港にたくさんのファンが出迎えてくれたり、数万人規模のイベントが開催されたりと、日本のセクシー女優に対する人気の高まりは実感していました。三上の前にも、セクシー女優の波多野結衣さんがNFTオークションで1億円以上を集めていましたし、この反響自体に驚きはなかったですね」

となれば、今回のオークションの落札価格にも期待がかかるが、この企画に賛同したのは、あくまで「NFTの啓蒙にある」と言う。

「アダルト作品に顕著ですが、ネット上のコンテンツは無料で見られてしまうことが当たり前でした。NFTはそういうものに大きな価値が付く可能性を秘めています。これを普及させることで、女優だけでなく、カメラマンやディレクターなど、いろんなクリエイターに利益がちゃんと還元される仕組みが定着してほしい。そこに少しでも貢献できればというのが本音ですね」(三上の事務所関係者)

前出の藤井氏もうなずく。

「NFTはエンタメ産業の今後を変える可能性があるほど魅力的な技術。そんなNFTについて番組を通じて知ってもらいたい。それが一番です。クリエイターに対しても、世界に向けてNFT作品を販売することにより、日本から羽ばたく機会を提供できればと思っています」

すでに次回以降のブッキングも進めているといい、アダルト業界に限らず、アイドルやアニメ、マンガなど、海外で知名度の高いさまざまなジャンルのクリエイターの参加を予定している。

果たして、ここから日本でもNFTのムーブメントを生み出していけるのだろうか?