『Rust』の主役、アレック・ボールドウィン氏。撮影中に小道具の銃から実弾が発射され撮影監督が死亡、監督が肩を負傷した 『Rust』の主役、アレック・ボールドウィン氏。撮影中に小道具の銃から実弾が発射され撮影監督が死亡、監督が肩を負傷した

10月21日、米ニューメキシコ州で、映画『Rust(ラスト)』の撮影中に、俳優のアレック・ボールドウィン氏が引き金を引いた小道具のコルトSAAリボルバーから誤って実弾が発射された。

この誤射により、撮影監督のハリーナ・ハッチンス氏が死亡、監督のジョエル・ソウザ氏が負傷するという凄惨(せいさん)な事故が発生した。捜査担当官は「撮影現場には安全確認に対する慢心があった」と指摘。発砲されたのは実弾で、持ち込まれた経緯を明らかにする必要があるとも述べた。

しかし、なぜCG技術が進歩した今でも本物の銃が使われているのか。銃器の専門家で米映画事情にも詳しい小峯隆生氏はこう話す。

「近年のハリウッドは本物の銃の使用禁止に大きく舵(かじ)を切っていますが、今作は低予算で撮影期間もタイトでした。そのため、お金も時間もかかるCGなどの視覚効果ではなく、本物の銃を使うことでリアリティを出そうとしたのでしょう。言わずもがな、アメリカは銃が規制されていないので、本物の銃を使用することは法律上問題ありません」

リボルバーを正面から撮影する際、装填された弾の先端が見えるため、弾頭のない空砲弾は使えない リボルバーを正面から撮影する際、装填された弾の先端が見えるため、弾頭のない空砲弾は使えない

使用する際は厳重なチェックや管理が行なわれるはずだが、今回の事故は"不幸な偶然"がいくつも重なった結果だと小峯氏は語る。

「まず、今作の舞台が1880年代の西部劇で、使われていたのがリボルバーだったこと。細かい話になりますが、ガンアクションで使われる空砲弾と実弾は弾頭があるかないか、という違いがあります。空砲弾にも火薬が入っているので、撃てば銃口から光や煙が出ます。そのため、銃撃戦のシーンなどで使われますが、弾頭はないから飛ばないし、先端の見た目も違います。

一般的なオートマチック銃は装填(そうてん)した弾が外からは見えないため、使用するのは空砲弾のみですが、リボルバーは前から見ると装填した弾の先端が見えるため、空砲弾だけではなく実弾に似せて作った模造弾も必要になります。

この事故は正面からの撮影時に発生しました。模造弾を使う予定だったのでしょうが、実際に装填されたのは模造弾によく似た実弾でした。そして引き金が引かれ、目の前でカメラワークを考えていた監督らに当たってしまった」

しかし、なぜ危険な実弾が撮影現場にあったのか。ゴシップ記事を扱うニュースサイト『TMZ』は、製作スタッフの数人がセット外で撮影用の銃に実弾を込めて的当てをしていたと報じた。捜査もその方向で進んでいる。小峯氏は現場スタッフの経験不足からくる不注意もあるという。

「今作の銃器担当者は経験がほとんどなく、実際に映画で銃器を担当するのは2回目でした。訓練された銃器担当者は、たとえそれが模造弾であっても、すべての弾を耳元で振って確認します。

『サササ』と火薬の粉の音がすれば実弾、しなければ偽物。それを受け取った助監督も弾を振って確認、使う立場の役者も最後にもう一度確認すべきでした。ボールドウィン氏は今回が初の西部劇。リボルバーの使用に慣れていなかったんでしょう」

全米が注目しているこの事故、責任は誰にある?