芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!
★【捨てるもの第4回】両面宿儺の指(呪術廻戦)
週刊少年ジャンプで現在連載中の『呪術廻戦』(芥見下々)に登場する、千年以上前に存在した腕が4本ある呪いの王「両面宿儺」の魂が宿った指。全部で20本の指が存在する。今もなお、それを取り込んで力を得ようとする呪霊を引き寄せ、破壊は不可能とされている。主人公の虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)は体に取り込むことで、呪力を発揮できるようになった。
つまり、これって大昔の"鬼の指"ですよね? もし、ミイラ状のものが物置とかから出てきたら困りますね、どう処分したものか......。通常であれば「可燃ゴミ」で問題なさそうですけど、念がこもっていそうなものを捨てるのは、気分はよくないですよね。
たまに粗大ゴミに仏壇が出されているのですが、ルール的にはタンスと一緒なので普通に回収します。位牌もゴミのルールにおいては"ただの木材"とみなされますので、可燃ゴミとして処理されます。
念がこもっていそうといえば、気持ち的にぬいぐるみは回収しづらいですね。ちょっと前に、ゴミ回収車にぬいぐるみをぶら下げるブームがあったんです。それって、クレーンゲームなんかで取っていらなくなり、ゴミに出されたものなんですね。やっぱり清掃員たちも捨てづらい気持ちがあったんでしょうね。
ぬいぐるみをそのまま捨てる人は多いですが、紙袋とかに入れて見えないようにしてくれたほうが、我々清掃員の気持ちは楽になりますね。あと、日本人形も怖い。「捨てたのは俺じゃないから、呪わないで!」って思いながら回収しますよ(笑)。
人形やぬいぐるみは清掃車で回収することもできますが、お寺や神社で人形供養をやっているところもあるので、そっちに出してもらってもいいかもしれないです。「両面宿儺の指」も、そのほうがいいのかな? ただ「呪われるかもしれないし、誰かが奪いに来るかもしれないですよ」って事前に説明して、お布施も多めに包むべきでしょうね(笑)。
お寺や神社に集まった人形などを焼く「お焚き上げ」って、昔は何でもかんでもじゃんじゃん焼いていたらしいですけど、最近はプラスチックの人形を焼くとダイオキシンが発生しちゃうことがわかったので、簡単には燃やせないんですよ。ダイオキシンは地球上で最も有害な物質のひとつらしいですから。ダイオキシンを発生させないためには、850度以上の火で燃やさないといけないんです。清掃工場では、ゴミを高熱で燃やしてダイオキシンを発生させないようにしています。
「両面宿儺の指」って歴史的にとても貴重な物でしょうから、簡単に捨てたりせずにお寺や神社に寄贈するほうがいいかもしれないですね。それで何年かに一度ご開帳したら、すごい集客できると思うんですよ、大きいお寺や神社なら呪いも抑えられそうだし。あとは国立科学博物館で「ミイラ展」とかをたまにやっているから、そこに寄贈しても展示の目玉になってお客さんがわんさか来ますよ! もはやゴミ清掃の問題じゃなくなってるけど(笑)。
でも、僕が最近オススメしているのは「コンポスト」です。土に住むバクテリアの力を使って、生ゴミや落ち葉などを堆肥に変えちゃうとても便利なものです。少し大きめの容器を用意して、そこへホームセンターなどで売っている黒土を入れれば「コンポスト」の完成です。
例えば、骨付きチキンの食べ残しを「コンポスト」の黒土の中に入れると、バクテリアの働きにより肉の部分は分解され、きれいに骨だけが残ります。野菜のクズや食べ残したご飯などを入れると、完全に消えてなくなります。この「コンポスト」によって、生ゴミの量をかなり減らすことができるんです。
呪術廻戦では、「両面宿儺の指」を食べると普通なら死んじゃうって話ですけど、コンポストに入れちゃえばバクテリアは気にせずに分解すると思いますので、結局、バクテリアが地上最強なんじゃないでしょうか!?
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!