芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、「ゴミ清掃員」としても日々働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただしここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞のファンタジーゴミ連載!

【捨てるもの第3回】どこでもドア(ドラえもん)
国民的漫画ともいえる『ドラえもん』(藤子・F・不二雄)に登場するひみつ道具のひとつ。行き先を思い浮かべてドアを開ければ、その名の通りどこでも行くことができるドア。

『ドラえもん』に出てくる道具って、比較的よく故障するイメージありますよね。そのたびにドラえもんが修理したりしてますけど、古くなったら当然捨てることもあるでしょう

どこでもドアは、サイズ的には「粗大ゴミ」に分類されます。一般的な網戸なんかも粗大ゴミとして回収しますから、それと一緒と思って問題ないと思います。

でも、その中身については大問題です。どこでもドアにはいわゆる"ワープ機能"が付いているわけですから、すっげえ最先端な機械じゃないですか? となると、見た目は木製っぽいただのドアですけど、内部には相当複雑な機械構造が組み込まれていて、レアメタル(希少金属)なんかが使われてるんじゃないかなと。もしそうだったら、粗大ゴミとして捨ててほしくないんです。

小型家電リサイクル」という仕組みがあるんですけど、これは炊飯器だとか携帯とか、レアメタルが使われているものを集めて回収するという仕組みなんですね。レアメタルをしっかり再利用して、海外から輸入しなくてもいいようにしましょうと、そういうことです。

日本って、世界有数の「レアメタル埋蔵量」がある国と言われています。しかしそれは、レアメタルが日本国内の地中に眠っている、というわけではなく、要は捨てられてしまう「ゴミ」の中に埋蔵されている、ということです。それらをちゃんと資源として回収し再利用すれば、レアメタルを輸入に頼ることなく、日本国内だけでほぼまかなえるようになるわけです。

もし、レアメタルが使われている家電類が粗大ゴミや不燃ゴミとして捨てられてしまったら、砕いて埋めるしかないのでリサイクルはできません。パソコンやドライヤー、ファックスなどにも多くのレアメタルが使われていますので、どこでもドアなんか、おそらくとんでもない量のレアメタルが使われているんじゃないでしょうか?

ですので、どこでもドアは「小型家電リサイクル」の業者に連絡し、リサイクルされる形で回収してもらうのがいいでしょう。

もし「どこでもドア」が「小型家電リサイクル」ではなく粗大ゴミとして出されてしまったとしたら、それは「粗大ゴミ中継所」というところに持ち込まれ、手作業で「鉄資源」「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」に分別されます。

たとえばタンスだったら燃えるゴミ、自転車だったら、鉄資源です。分類が難しかったり金属やプラスチックなどが混ざっているものは、「不燃ゴミ」として小さく砕かれて埋められます。おそらく「どこでもドア」はこのパターンで、機械で砕かれて埋められてしまう運命です。

そのパターンでさらに問題なのは、「リチウムイオン電池」が使われている場合です。今、小型掃除機などのバッテリーにつかわれているリチウムイオン電池が原因で清掃車が火事になる案件が多く、回収するときには清掃員がバッテリー部分だけ取り出すようにしています。このバッテリーというのは、ちょっとでも圧縮されると火が出るんです。

さらに厄介なのが、圧縮された後、10分後に燃えるか1時間後に燃えるか、分からないことです。気づかずに清掃車で回収し、1時間後に車内で発火して大騒ぎ、みたいな話をよく聞きます。

なので、あなたがもし「どこでもドア」を捨てようと思った場合は、どこでもドアが電池式なのか充電式なのかよく確認して、もし充電式だったらバッテリーの部分だけは別にしておいてください! バッテリーには「拠点回収」というのがあって、家電量販店とか、都内だったら区役所などで回収している場合もあります。

モバイルバッテリーなんかも、見た目はただのプラスチックなので不燃ごみで捨てる人がよくいますが、とんでもないです! 我々が大変な目に合っているということを、「どこでもドア」きっかけで気づいてくれたらうれしいです。

この「リチウムイオン電池」の話は、また改めてしたいと思います。

また、捨てたゴミがいきなり作動してしまうパターンもよくあります。たとえば小学生が使うような防犯ブザーがゴミの中でよく鳴りますよ。防犯に役立つくらいだから、音がでっかいんですよ! 回収した清掃車内で突然鳴り出すと、ずっと鳴りっぱなし。そうなると手の施しようがありません。運転中のドライバーさんが「あ~、うるせえ!」と叫んでおかしくなってしまいそうな場面にもよく遭遇します。

ですので、どこでもドアの電池やバッテリーはしっかり抜いて、できるならドアがいきなり開いちゃわないように、ガムテープか何かで留めておいてほしいですね。清掃員がいきなり異空間に放り込まれたら恐ろしいですからね。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!