芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第8回】進撃の巨人(進撃の巨人)
諫山創によって2009年に「別冊少年マガジン」で連載がスタートした漫画作品。突如出現した「巨人」によって人類の生活はおびやかされ、人々は巨大な城壁内で生活することを余儀なくされる。人を襲う巨人たちと人類との戦いを描いた大作漫画である。

先日、千葉の九十九里のビーチにゴミ拾いに行ったんですよ。そうしたら犬くらいのサイズの骨が、2匹ぶんぐらいビーチに埋まってたんです。想像ですけど、死んでしまった犬をビーチに埋めた人がいたのかなと。

以前、呪術廻戦の回で「コンポスト」の話をしましたが、砂浜でも同じようにバクテリアが有機物を分解するのかもしれません。もちろん、その骨がなぜそこにあったのか真実はわかりませんが、自然と骨だけになった生き物を見て「わざわざ燃やす必要はあるのかな?」と思いました。

日本は「焼却炉が多い!」って世界中から責められているんです。日本は世界で最も多くの焼却炉を保有していて、焼却炉でゴミなどを燃やせば二酸化炭素も排出するからです。

世界って、日本ほどゴミを燃やさないんです。発展途上国なんかでは燃やさずにそこら辺に置いてるみたいな状態で。それはそれでどうかと思いますが、アメリカの一部地域などでは前出の「コンポスト」が義務化されていたりとか、生ゴミを出したら罰金という地域もあったりするんです。

そう考えると「進撃の巨人」を処分するために、土をかぶせてバクテリアに分解させるというのは一つの手かなと思いますね。通常は燃やすんでしょうけど、やっぱり環境にもよくありませんから。

もし巨人を燃やすとしても、巨大な骨が問題だと思います。たとえば、ホタテやカキの殻はカルシウムなので通常は燃えるゴミで出して問題ないんですが、これらが大量に獲れて大量に消費される地域では、「不燃ゴミ」に分類されたりもします。

貝殻も大量になると燃えにくいそうで、何千年前の「貝塚」がまだ残っているくらいですから、少量ならまだしも大量だと処理が難しいと。そうなると、巨人サイズの骨も処分が難しくなりますよね。

あとは、こういった生き物は放置していると腐ってしまいますから、それも問題です。早めに処理方法を決めないといけない。

洪水や地震など災害時のゴミ清掃はまず畳から回収していくのがセオリーです。なぜかというと、腐りやすく虫が湧きやすいから。そうすると菌や病気の発生源になってしまうので、早めに回収して処分することになっています。

そんな諸問題を考えると、巨人の処理にはやはり「コンポスト」がいいんじゃないでしょうか。

私が家庭で使っている一般的なプランターサイズのコンポストだと、チキンの食べ残しなんかが夏なら5~7日で骨だけになります(冬では2週間ぐらいかかります)。バクテリアは人間と同じものが好きで、肉や魚は大好物、卵の殻はまったく食べないし、ミカンの皮も食べるのは遅いです。

しかし、20メートル級の巨人をプランターサイズのコンポストで分解するのはちょっとハードですよね。「コンポスト」に使えるのは黒土なんですが、東日本の土壌は火山灰がそんなにないから、そこら辺の黒土でも「コンポスト」に使えると言われています。

なので、東日本の自治体で受け入れてくれるところを急いで探し、バッと埋めちゃえばきれいに骨だけになるんじゃないでしょうか? 残った骨の処分は難しいので、そのまま埋めておくしかないと思います。

巨人は人を襲って食べたりしていましたが、最後はバクテリアに食べられるということで、生き物の循環には巨人も逆らえないってことですよ。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!