芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第10回】デンデンハウス(ドラえもん)
漫画「ドラえもん」に登場するひみつ道具。カタツムリの殻の形をした住居で、お尻にはめるとその中に入ることができる。とても頑丈で「爆弾でも壊せない」ほど。

この『デンデンハウス』って、爆弾でも決して壊れないほど頑丈なんですよね? じゃあゴミとして燃やしたり砕いたりなどの処分ができないので、これがヒットした日にはあっという間にゴミの最終処分場は埋まっちゃうでしょうね(笑)。

とても堅い石など、機械で砕くことができないものは最終処分場にそのまま埋めるしか方法がありません。そういうものは埋めても分解されることはありませんから、半永久的にそこに埋められたまま。デンデンハウスはきっとそうなると思います。

ゴミ処理って、燃やすにしても砕くにしてもバクテリアで分解するにしても、要は「体積を縮める」ということをやっているわけです。でも、デンデンハウスは「決して壊れない」わけですから、体積を縮められないということですよね。

そうなるとメーカーを疑いますよね、開発した企業の理念を知りたい(笑)。まあ未来の製品ですからね、その頃になったら新しい処分の仕方があるのかもしれません。

僕が好きな話で、星新一の『おーいでてこーい』って短編があります。深い穴があって、「おーいでてこーい」と呼びかけても何の反応もない。しかも何を投げ入れても埋まる気配もない。人類はその穴をゴミ捨て場として利用し始め、産業廃棄物放射性廃棄物までも捨て始めます。

すると地球はとてもきれいになりますが、あるとき空から「おーいでてこーい」という声が聞こえます。声のする方を見上げると、空から小石が落ちてきて......というお話です。

とても星新一っぽいお話で、本当に大好きです。つまり、未知なる四次元になんでも送り込めるからといって、それに頼っていいのか?ということです。

だから、生み出したはいいけど不必要になったらポイと捨てちゃうという考え方はよくないと思いますね。ちゃんと処分できるように考えておかないといけない

現在、太陽光パネルは効率的なリサイクルや再生が確立されておらず、捨てても最終処分場に埋めるしかありません。近年、太陽光パネルは増えていますが、数十年後には老朽化で熱吸収効率が悪くなり、みんな一気に捨てることが予想されていて、最終処分場をかなり圧迫するだろうと言われています。

また、市役所や学校の校舎などにかかっている「○○出場おめでとう!」みたいな垂れ幕がありますよね? あれって塩化ビニル製で簡単には燃やすことができず、埋めるしかないそうです。これも最終処分場を圧迫するということで、問題になっています。

最近では垂れ幕をカバンに作り替えるなど、「アップサイクル」が始まったりしています。

デンデンハウスも捨てられないのであれば、アップサイクルしないといけないんじゃないでしょうか? デンデンハウスのセカンドキャリアを考えてあげないといけませんね。

デンデンハウスは中に入れるので、カプセルホテルやシェアハウスとしての再利用はどうでしょう? 中に入ったのび太も「広くもなく狭くもなく快適!」と言っていたようですから。自分のスペースを確保するための避難場所としてもいいかもしれません。

普通に売っていれば「便利だな」と思って買うけど、実は捨てられないものがあるということは周知する必要があると思っています。
 
最終処分場の寿命は、東京はあと50年ほど、日本全国では約20年と言われています。つまり、全国的にはおよそ20年でゴミの捨て場所がなくなるということです。東京の寿命が長いのは、東京湾に埋めているから。もし今、デンデンハウスが大ヒットして大量生産されれば、日本の終わりです。

最終処分場を増やそうという動きもありますが、住民の反対などもありおそらくこれ以上増えることはありません。だから、今ある処分場の寿命を延ばしていくしかないんです。

そのためにはゴミを減らすのが一番大事ですが、それだけでは追い付かないので、あまり砕かずに埋めていた過去の時代のゴミを一回掘り起こして砕き、再び埋めたりもしていますが、それには莫大なお金がかかります

最終処分場で何のゴミが一番問題になってるかというと、ゴミを燃やした後のです。最終処分場に埋めるものは、基本的に不燃ゴミを砕いたもの、この2つです。

要は可燃ゴミと不燃ゴミを減らし、他のゴミは全部資源として再利用できれば、まだ寿命が延びるということです。

ドラえもんが誕生するのは2112年の9月3日、いまからちょうど90年後です。ドラえもんさえいればすべての問題を解決してくれるでしょうから、最低でもあと90年はゴミを捨てられる世の中を維持したいですね。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!