芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第11回】聖衣(クロス)(聖闘士星矢)
1985年より「週刊少年ジャンプ」誌上で連載がスタート。作者は車田正美。少年たちが聖闘士(セイント)となり、聖衣(クロス)と呼ばれる鎧を身にまとって戦いを繰り広げる。主人公の星矢は天馬星座(ペガサス)の聖衣を身にまとう青銅聖闘士(ブロンズセイント)だ。

聖闘士星矢』に登場する聖衣(クロス)を処分したいと考えた場合、「ゴミ」としての分類は非常に難しいですよね。一見素材は金属性で、形状はヨーロッパ的なヨロイのように見えます。しかし、聖衣が着用者を聖闘士(セイント)として認めるか判断したり、自己修復能力を持っていたりと、聖衣自体に知能や能力が備わっています。そうなると、ただの金属として扱うわけにはいかなそうです。

ただの石かな?と思ったら実は生きているという、サンゴ的なとらえ方が近いんでしょうか? 

ちなみに、サンゴといえば海洋汚染や気候変動の影響などで、数十年後に絶滅してしまうかもと言われていますが、最近では肌に塗る日焼け止めが、サンゴなどの生態系に影響をあたえる原因のひとつであると議論になっています。

近年の暑さでは、海に行くなら日焼け止めは必須アイテムですが、日焼け止めに含まれている「オキシベンゾン」や「オクチノキサート」などの成分が、水生生物に対し悪影響を与えていると言われているのです。

たかが日焼け止めが?と思われるかもしれませんが、世界中で年間約1万4000トンもの日焼け止めが海に溶け出しているという調査結果もあり、環境に配慮したタイプの日焼け止めを使うことが求められていたりするんです。国によっては、環境に有害な成分を含む日焼け止めを規制する法案が施行されているところもあるくらいです。

それはさておき、話を元に戻します。聖衣はどんな素材でできているかというと「オリハルコン、ガマニオン、銀星砂」らしいのですが、どれも地球上には存在しない素材です。

そのような分類不可能な素材の場合は、ゴミとして燃やすことも再利用も難しいため、そのまま最終処分場に埋めてしまうしかないと思います。しかし埋めたはずの最終処分場へ、神から認められた聖闘士がやってきたら、聖衣は埋めてあろうが飛び出してきますよね。それで世界の平和は守ってもらえるかもしれませんが、清掃員にとってはすごく困ります(笑)。

一般的な金属性のヨロイならば、単純に粗大ゴミとして出してもらうのがいいでしょう。

粗大ゴミは「ゴミ中継所」という粗大ゴミが集まるところがあって、そこで手作業によって可燃・不燃・金属に分類していきます。ヨロイは金属ですから、自転車などといっしょにでっかい機械でつぶされ、新たに鉄の固まりとして生まれ変わり、リサイクルされるわけです。

今、鉄の価格は高騰しているので、スチール缶などはしっかりリサイクルに出しましょう。

もし聖衣に「レアメタル(希少金属)」が含まれているのだとしたら、レアメタルは超貴重ですので、これもリサイクルは必須です。

しかし、聖衣はレンガなどよりも固い素材でしょうから、機械の歯で砕くことはできないかもしれません。うっかり聖衣の一部をゴミで出してしまうと、機械の歯が欠けてしまうことになるので注意が必要です、この連載で繰り返し言っていますが、ゴミ集積場の機械を修理する費用はみなさんの税金ですから。気を付けたいところです。

この聖衣もそうですが、連載第3回で取り上げた「ジョジョの奇妙な冒険」にでてくる石仮面のように、手に入れたはいいが捨てられないものって世の中にいっぱいありますので、それは知っておいてほしいですね。

一度手に入れたのなら簡単に捨てようとせず、希少価値のあるものなら必要としている人に売ったりすることも含めて、再利用を考えるべきだと思います。

誰かに売ることによって世の中のゴミはだいぶ減りますし、新品でなく中古でまかなうという行為も、ゴミを減らすことにつながります

なので、聖衣を欲しがる人は相当数いるでしょうから、いらなくなったから捨てるのではなく、売る方法を考えましょう。海外の大金持ちの豪邸に聖衣が飾ってあったら、それはそれでめちゃくちゃかっこよくないですか?

でも、聖衣って神様から与えられたものですから、それを売るって人としては最低ですけどね(笑)。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!