芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!
【捨てるもの第14回】インク(スプラトゥーン)
ヒトの形に変身することのできる謎のカラフルなイカたちが、街や公園、建物を舞台に筆やローラー、銃などのブキを使ってインクを塗りたくるアクションシューティングゲーム。現在『スプラトゥーン3』(Nintendo Switch)が好評発売中。
まず、この「スプラトゥーン」で使われているインクは、ペンキ的なやつだと思うんですよ。缶とかに入っている状態なら捨て方はありますけど、ぶちまけちゃってからはもう無理ですよね。ゲーム内では、ぶちまけたインクをタンクに補給していますが、私たち清掃員にその能力はありません。さて、どうしたらいいか? インクを洗い流して下水に流せばいいんじゃないかって思うかもしれないですけど、あれだけ大量のインクを流すのはダメです!
いったんゴミ処理の話をさせてもらいますが、ゴミって燃やしたらそれで終わりじゃなくて、燃やした後は灰になるんですね。その灰や不燃ごみを砕いたものを埋める「最終処分場」という場所があるんですけど、降った雨が灰や不燃ゴミを通過すると、その雨は猛毒になって下水には流せなくなります。
流しても大丈夫なレベルにまできれいにするのに、東京都でだいたい25億円かかっています。汚染された水をそのまま下水に流さないように処理しているんですね。これは小さな自治体でもやっていて、それでも7、8000万円はかかっていると言われています。
ゴミって捨てたら終わりじゃないんです。最終処分場に埋めておくという維持費がかかります。最終処分場が増えていくと、もっともっとお金がかかる。東京の25億円って、今までにかかったお金じゃなくて、年間ですからね。捨てたら終わりじゃなく、エンドレスにお金がかかるんです。
話をスプラトゥーンに戻すと、上記のような理由から下水に流すのはNGですし、以前も話しましたが液体はゴミで回収できません! なので、インクは新聞紙に塗るとか布に染み込ませてもらってから、可燃ゴミとして捨てるようにして下さい。もしくは保存容器のフタを開けっ放しにしておいてカチカチに固まったら、容器ごと不燃ゴミで回収することができます。
改めて、液体の回収がダメなのは、水分によってゴミが燃えにくくなっちゃうからです。そのぶん余計な燃料代がかかりますし、その費用は税金ですからね。
あと、「泥棒はどんなところに入るか」って本を読んだことあるんですけど、落書きが多かったりゴミ集積所が汚れているエリアを狙うらしいです。なぜかと言うと、街の汚れを気にする人がいないってことは、地域を見張る目がないと判断するんだそうです。だから、スプラトゥーンの街はきっと泥棒だらけですよ!(笑)
海外でも、落書きがあったりゴミがたくさん落ちているエリアには行くなって言うじゃないですか。それと同じ話ですよ。
インクと同じドロドロ繋がりで言えば、YouTubeとかでスライムを使うのが流行ってますよね。あれをどうやって捨てるのかという問い合わせが増えているらしいです。スライムはよっぽど大量でなければ、普通に可燃ゴミとして捨てて大丈夫です。
スライムは基本的に「ホウ砂」と「洗濯のり」で作られています。一見下水に流しても問題なさそうですが、大量に流すと下水管が詰まってしまう恐れがあります。なので、可燃ごみとして捨ててください。
もっと丁寧に捨てたい方には、塩を使う処分方法をおすすめします。スライムに塩をかけると、水分と個体に分離します。水分は紙や布に染み込ませて、固体部分も念のためベランダなどで乾燥させて、しっかり水分をなくしてから可燃ゴミに出してもらえると完璧ですね。
あと、アイスを買ったときなどについてくる保冷剤は、絶対に中身を下水に流してはダメです。あれは吸水性ポリマーだから、おむつの中身と一緒なんですよ。水を集めて固まっちゃう。丁寧に中身をシンクに流してから袋を捨てようって人もいるかもしれないですけど、そのまま燃えるゴミに出して大丈夫です。
ちなみに、保冷剤の中身は植木に使うのもいいらしいです。旅行などへ行く際、水を含ませた保冷剤を土の上へ置いておけば、そこから水分が出て数日なら水やりをしなくてもいいと聞いたことがあります。
それにしてもスプラトゥーンの街は、この後とんでもないことになりますよ。このまま放置していたら、どんどん街が荒んでいきます!
いっそのことインクを塗り重ねるのではなく、きれいにする人にもゲームに参加してもらいたいですね。こぼれたインクをすくい取って、シンナーなどで壁をきれいにするキャラ。「スプラトゥーン4」に向けて、任天堂さんに提案してみようかな?
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。
★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!