芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第16回】タケコプター(ドラえもん)・後編
漫画「ドラえもん」(藤子・F・不二雄)に登場するひみつ道具のひとつ。頭に装着することで、空を自由に飛び回ることが可能に。いまさら説明不要の、ドラえもんを代表する道具。

先週に引き続き、今週もドラえもんのひみつ道具「タケコプター」の捨て方について話をしたいと思います。

「タケコプター」は"電池式"か"充電式"かによって捨て方が違います。充電式の場合は、現代の技術で考えると「リチウムイオン電池」が使われているはずで、処分の方法は自治体によってかなり違う、というお話を先週させてもらいました。

リチウムイオン電池自体はすばらしい発明で、とても便利です。電気自動車にもリチウムイオン電池が使われていますし、これからさらに増えていくことは間違いありません。

でも逆に言うと、そろそろ出口を決めないといけないのかなとも思っています。たとえばコンビニで回収できるようにするとか、全国どこでも可能な回収方法を確立する必要があるのではないでしょうか。

リチウムイオン電池の回収・リサイクルの方法って周知されてないですよね? ビン、缶、ペットボトルなどは大量に集めればお金に替えることができるほどですが、モバイルバッテリーが落ちていても拾ってリサイクルに持って行こうとは誰も思わないでしょう。もしそんな時代が来れば、一般に広く周知されたという証明になるのかもしれません。

リチウムイオン電池もかなり進化しています。ひと昔前のパソコンや携帯を長時間使っていると、熱を持ってパンパンに膨らんでしまった、そんな経験がある人もいるんじゃないでしょうか? 今ではかなり軽減されているようですが、タケコプターが生まれる22世紀では、さらに進化しているのでしょうね。

進化といえば、最新マンションのゴミ捨て場では、「貯留」といってゴミをためておいて一気に捨てるシステムが導入されているところがあります。我々が手でゴミを回収する必要がなく、回収車を寄せてボタンを押せば、ウィーンと機械が回ってゴミが出てくるシステムです。

我々にとってはとても楽だし、捨てる側もおそらく楽でしょう。しかし、こういうところに限って可燃ゴミに交じって資源不燃ゴミなども捨てられていたりすることがあります。

もし「リチウムイオン電池」が燃えるゴミに紛れて捨てられていた場合、作業員が手で回収していれば「これヤバい」と事前に気づいて分別することができますが、こういったシステムでは手出しができず、回収車で圧迫され発火してしまうかもしれません。ドラえもんの未来ならいざ知らず、発展途中の技術に関しては、まだまだ改良の余地があるように思います。

タケコプターの電力部分以外の捨て方も考えておきましょう。もしタケコプターが金属性だったとしたら不燃ゴミ、地域によっては資源になりますね。

プロペラと本体部分で素材が違っている場合は、分解して不燃ゴミ資源に分ける必要がありますが、部分的に違う素材が使われているだけであれば「9割ルール」によって多く使われている素材に合わせて捨てれば大丈夫です。

あと考えなければいけないのは、内部にはおそらく制御装置や通信装置など、かなりハイスペックな機械が入っていると想像できますよね。その場合は、レアメタル再利用のために「小型家電回収」に出してほしいですね。

2013年に施行された「小型家電リサイクル法」に基づく「小型家電回収」は対象品目が自治体によって違いますが、多いところだと28もの家電が指定されています。デジタルカメラや電卓など、こういったものに含まれるレアメタルを再利用するためにも、必ず回収に出してください。回収のやり方も自治体によって違うようです。

もしタケコプターが発売されればメチャクチャ売れますよね。ひとり2台持ちは当たり前の時代がやってきますよ! そうすれば必ず「小型家電回収」の品目に入ると思います。

現在でタケコプターに近いものだと、「ドローン」があります。ドローンにも、リチウムイオン電池が使われています。

ドローンを処分する場合は「産業廃棄物」に区分されます。所有しているドローンを廃棄する場合は、自治体の規制に添う形で処分しなければなりませんが、各自治体によって事情が違うので、これもまた全国的に統一された回収・処分の方法はありません。

「産業廃棄物」ですので、不法に捨てると企業としての違反とみなされます。なので罰則が厳しく、5年以下の懲役、もしくは1,000万以下の罰金、またはその両方が科せられます

気軽に買っても、捨てるときには気を付けなければいけません

電波が届かなくなり操縦不能で機体がロスしてしまった場合も、そのまま放置しておくと罰せられることがあります。そんな場合に備えて、探索費用を負担してくれる「ドローン保険」というものまであるようです。

未来に向けて世の中はどんどん便利になりますが、そのぶん見えない落とし穴も増えていきます。のび太のように失敗しても、すぐに助けてくれるドラえもんはまだいませんので、正しい知識を身につけて、空を自由に飛び回れる未来が来るのを待ちましょう。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!