芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!
【捨てるもの第19回】未来小切手帳(ドラえもん)
金額とサインを書き込めば現金の代わりに支払い手段として使用可能という、ドラえもんのひみつ道具。通常の小切手は銀行口座から引き落とされるが、この道具は「未来にもらう予定のお金から前借りする」という仕組みになっており、結果としてのび太は43歳の夏のボーナスまで使ってしまった。
通常の小切手であれば、使わなかったものは銀行に返却するのがルールになっています。じゃあ現金を捨てたい場合はどうなるのか? そもそもそんな人はいないと思いますが、「貨幣損傷等取締法」という法律があり、貨幣を故意に傷つけたりすると法律違反になるようです(厳密にいうと紙のお札や記念硬貨などは対象外で、「捨ててはいけない」という具体的な決まりもなさそうです)。
「中間処理施設」でゴミを仕分けているときにお金を見つけることはよくあって、粗大ゴミを燃えるゴミと燃えないゴミに分けていると、ソファーの隙間からよく小銭が出てきます。
あと、本に挟まれたへそくりを見つけたケースも聞きますし、小銭がまとめて捨てられていることまであります。貯めていたけど両替するのが面倒くさくなっちゃったんですかね? ちょっと意味が分かりません。
処理施設や集積場で見つかったお金はどうなるかというと、そういうお金を入れておく場所がちゃんとあります。小銭だったら盗ってもバレなくね?って思うかもですけど、処理施設には監視カメラもありますし、清掃員の着服は犯罪な上に職も失いますから、そんなことをする人はほぼいません。
じゃあ、ゴミ集積場に出されたものを個人的に拾った場合はどうなるのか? ゴミなんだからいいだろうと思いがちですが、自治体によっては条例などにより持ち去り禁止とし、罰則を設けているところもあるようです。価値のありそうな古本とかレコードがゴミに出されているのを僕も見たことがありますが、捨てられた時点で自治体の所有物になる場合が多いようです。
単純に、お金を材質だけで考えるならば、紙幣や小切手は燃えるゴミ、小銭は燃えないゴミに分類されます。もう使用できないような大昔のお金だったら特に法律はないみたいなので、ゴミとして出されていたら通常どおり回収します。
ちょっと話はそれますが、小銭などの金属つながりで、ひとつ思い出した話があります。
空き缶って潰して出される方が多いんですが、潰さないで出してほしいと呼びかける所が少なくないです(自治体によって違う、というのが前提ですが)。なぜかというと、集まった缶は圧縮してひとつの大きな固まりにするのですが、前もって潰してあるとうまく固まらないんですよ。
あと、「缶は洗って捨てたほうがいい?」って聞かれるんですけど、集められた缶はドロドロに溶かして再利用されます。中身のビールやジュースは溶かす過程で蒸発しちゃうので、処理的には洗って捨てなくても問題はないです。洗って欲しいと言っているのは、衛生的な問題です。
缶詰にシールが貼られているものがありますが、それも溶かす過程で燃えてなくなりますから、はがさなくても大丈夫です。ビールとか日本酒の瓶のラベルも、同じ理由で無理にはがさなくてもOK。
ただ、僕は個人的に缶や瓶は洗って捨ててもらったほうがうれしいんです。夏はビールやジュースなどの腐った臭いでとんでもなく臭いですし、体質なんでしょうが、汚れたままの缶を回収してると、体に発疹ができちゃうんですよ。ベテラン清掃員からは「集まったアリにかじられたんだ」って言われるのですが、原因がわかりません。
あと、金属の話でもうひとつ。
最近はゴミを焼却したあとに出る灰に注目が集まっているんです。灰なんて何の価値もなさそうですけど、最近は灰に対して入札が行なわれると言われています(もちろんまだ一部の自治体の話ですが)。どうしてかというと、灰の中に金だったり、価値ある希少金属が含まれている場合があるからだそうです。
何が入っているかわからないし、何も入っていないこともあるので博打みたいなところがあるようですが、もしたくさんの金や希少金属が出れば大きな利益になる。混ぜればゴミ、分ければ資源なんて言葉がありますけど、まさにその通りなんですよね。
話を本題に戻すと、そもそもお金や小切手を捨てるなんてもってのほかです。あたりまえだけどお金がもったいないし、ゴミも増えます。ゴミを埋め立てるなんて、未来の地球環境から前借をしているようなものですから、小切手もゴミもほどほどにしたいですね。もしお金を捨てるなら、太田プロの僕宛に送ってもらいたいですね!
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。
★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!