芸人コンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、日々「ゴミ清掃員」としても働く滝沢秀一が、ゴミの捨て方を指南する連載「ベンキマンの捨て方」。ただし、ここで扱うゴミたちは、架空のものばかり。あの漫画で出てきたあの道具や、映画で見たあんな機械など......。実在しない架空のゴミを、現実世界ではどう捨てればいいのか? 前代未聞の"ファンタジーゴミ連載"!

【捨てるもの第20回】特別編「ゴミ清掃員の一日」
連載20回を記念して、今回は特別編をお届け! 読者から「滝沢さんは清掃員としてどんな一日を過ごしているのですか?」という質問を多数いただいたので、それにお答えします!

僕が清掃員として働く日は朝6時半に出勤し、アルコール検査をすることから始まります。車の運転はしなくても、僕たち清掃員はアルコール検査が必須です。ゴミ清掃員は公務員のような立場でもあるし、酒臭い人がゴミ回収をしていたら危ないし嫌ですよね。検査に引っかかってしまうとその日は働けなくなっちゃうので、前日のお酒の飲み過ぎには注意しています。

ゴミの回収作業は、朝8時からスタートします。ゴミ回収車に乗って決められたルートで集積所を周り、回収車がいっぱいになったら清掃工場に持って行きます。

回収車には約2トンのゴミが入りますが、いっぱいになったらそれで終わりではなく、1日に大体6回はその作業を繰り返します。

ゴミを出すのは朝8時まで」と決められている場所が多いと思いますが、そうやって順番に回っていますので、どうしても回収が遅くなる地域も出てきます。だからと言って、遅れてゴミを出していいわけではありませんので、その点はルールを守ってもらえるととても助かります。

決められたルートの回収が終わったら、その日の仕事は終了です。逆に言えば、回収が済まなければ何時になっても仕事は終わりません。ゴミが多くて夕方までかかっちゃうこともありますが、長い期間働いていると「この現場は時間かかりそうだなー」とか「この時期はゴミが多そうだな」とか、ある程度予測ができるようになりました。

その日の回収が終わったら、ドライバーは回収車をホースでしっかりと洗います。作業員は事務所にあるお風呂やシャワーを浴びて勤務終了となります。僕はそこからお笑いの仕事を始めるわけですが、清掃員の中にはダブルワークでウーバーなどの配達員をやってる人も多い印象です。

回収するゴミは可燃、不燃、古紙、ペットボトル、粗大ゴミなどいろいろですが、一番キツいのがペットボトルの回収。軽いしニオイも少なそうだし楽そうじゃんって思うかもですが、実はそうじゃないんです。

普通のゴミは、ある程度で回収車がいっぱいになり、清掃工場に行くまでの間は少し休憩できるんですけど、ペットボトルは中身が空なのでいくら回収しても回収車がいっぱいにならないんです。なので3時間ぐらいぶっ続けで走りまわらないといけないこともよくあります。

しかも、他のゴミ回収現場はふたり体制なんですが、ペットボトル回収は作業員がひとり。これ、ペットボトルがまだ少なかった時代に決まったルールだと思うのですが、今となってはペットボトルはものすごい量出されます。それをひとりで走り回って回収しなければいけないんです。

夏場にこれをやっていると倒れそうになります。暑いけど、ルール上長袖の作業着を着なきゃいけないんですよ。腕まくりもしたくなりますが、これも規則でダメだったりします。

なので熱中症になりかけたこともあります。そうなってしまうと、スポーツドリンクをがぶがぶ飲んでも全く効果がないんです。僕の経験上、そんなときに一番効果あるのは「」ですね。なので、僕は塩を銀紙に包んで持ち歩いています。「ヤバい!」と思ったら、塩をベロンと舐める。すると驚くほどすぐに回復します。夏場にハードな作業をしている方にはおすすめです。

働いている人の年齢層はバラバラですが、長く続けている人が多いですね。仕事場として居心地は悪くないです。最近は「この街をキレイにしたい!」という志を持ったキラキラした若者も働くようになってきたりして、時代が変わったなって思いますね。

この仕事でやりがいを感じるのは、朝は集積所に山のようにあったゴミが、帰るときにすべてなくなっているのを見たときです。回収を終えて長い一本道を帰る道中、一緒にいた作業員の方が「この一本道のゴミ、全部俺らが取ってきたんだぜ」って呟いたことがありました。ちょうどのそのとき道が夕陽に照らされていて、僕も「確かにきれいだなー」って思ったことがあります。

当たり前のように感じる日常って、誰かが仕事をしていないと保たれないんです。もし僕らが仕事をしなかったら、あっという間に街はゴミであふれかえってしまう。そう考えると、とても大切な仕事をしてるんだなって思います。

僕は友達の紹介でこの仕事をはじめましたが、求人情報誌でも募集していたり、はじめ方はたくさんあります。この仕事をはじめた知り合いに20キロ痩せたヤツもいて、ダイエット効果も抜群です! 一緒に働く仲間を募集しています!って求人広告みたいになっちゃいましたね。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

★マシンガンズ・滝沢秀一の『ベンキマンの捨て方』は毎週木曜日更新!