2022年も残すところわずか。アフターコロナの活況が期待された今年だったが、寄せては返すような感染再拡大の波のなか、最後まで自粛ムードを拭(ぬぐ)い去ることができなかった。来年こそはパンデミックと無縁の生活が送れるよう願いを込めつつ、トレンドウォッチャー・カシハラ@姐御氏が来年起こるブームを大胆予測!
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■中東の激甘パイ生地スイーツ
ここ数年のスパイスカレーブームや、本場の味を再現するガチ中華ブームの影響からか、昔と比較してスパイスの香りに誰もが慣れてきた今、イスラム料理に脚光が当たっていますが、スイーツの世界にも中東ブームが到来しそうです。
なかでも一押しは「バクラヴァ」です。
サクサクのパイ生地にナッツを入れ、甘いシロップに浸したトルコや中東の伝統的なお菓子で、一度食べたらクセになる鮮烈な甘さとひと口で多重な味わいが楽しめるのが魅力です。都内の中東料理店でも販売する店が増え、その需要に応えるためバクラヴァ職人を日本に呼び寄せるほどの人気沸騰ぶりです。
銀座松屋には、180年の歴史を誇りオスマン帝国時代から愛される、トルコ・イスタンブールの老舗ブランド菓子店「ナーディル・ギュル」が出店。こちらの逸品は「バクラヴァの王様」と称され、オープン当初は100人の行列ができたという過熱ぶりも話題になりました。
2023年は「バクラヴァ」ブームで、こってり甘い中東スイーツが世の中をにぎわすことでしょう!
■異業種参入による異種格闘寿司
また2023年は、空前の高級寿司ブームがやってきそうです。
古くからの有名店はもとより、1万~3万円代の高級寿司店がここ最近では毎月のように新規開店しています。デートに使うもよし、接待にもよし、初対面の女の子を誘って断られる確率はほぼないのが、高級寿司の良いところ。もちろん決め打ちしたいデートでも外しません。
コロナ自粛でたまったうっぷんをスッキリしたい、お金を使いたい、思い切って外食したいと思うなら、絶対に損しないのが高級寿司なのです。半年待ちどころか1年待ちの店もあり、予約の取れない店の予約オークションまでできているほどです。
そんな需要に応えるために、高級寿司を手軽に食べさせる立ち食い高級寿司店まで出現しています。インバウンドの復活による外国人客の増加もあり、高級寿司店ブームには拍車がかかりそうです。
さらに2023年に高級寿司ブームを牽引しそうなのは、ベンチャー系企業などの異業種が経営する"異種格闘寿司"です。本業で培ったマーケティングスキルやSNS戦略を武器に、旧態依然とした寿司業界に殴り込みをかけるという面白さも受けています。
人材系企業のユニポテンシャルが経営する「鮨大将かきだ」では、社長自らが仕入れに行き、四苦八苦しながら交渉している様子を常に発信したり、店では破格の大盛りネタを提供するなど話題を振りまいています。
店の先行予約権を特典にしてクラウドファンディングで出資を募ったところ、飲食系として過去最大額を1日で達成。12月12日現在、5232万9110円を集めるなど期待が寄せられています。高級寿司をよりお得に食べたい層の支持を受け、この異種格闘寿司ブームはヒット間違いなしです。
■脱調理と一点豪華冷食
コロナ禍で促進されたのは、効率化と無人化。とにかくなんでも自動販売機で販売されるようになりました。きっかけは、冷凍自販機の開発で、いままで業務用だったメニューが冷凍自販機によって一般にも売り出されるようになりました。
そもそも冷凍食品は、3年連続で売上増加と右肩上がり。ここにきてオリジナルメニューを自動販売機で販売する飲食店も増えています。そんななかヒットしそうなのは、一点豪華な「高級冷凍食品」です。
冷凍技術も進んだ今、フレンチからイタリアンまでレストランメニューが手軽に自宅でチンするだけ。なんでも、50代女性の「料理が好き」割合は、10年間で8.5%も減少。なるべく料理しないですますのが今どきの主婦道ともいえるでしょう。手間をかけずにおいしいものが食べられる、便利な時代になりました。
■レジャー復活も節約志向に
庶民は使えるお金が減り、旅行もなかなか難しく......。そこでブームになるのは、お金のかからないレジャーです。2023年は「車中泊」の発展形たる「野宿」旅が盛り上がりそうです。
いまや「車中泊」に関しては、車中泊ムック本が数々出ており、ネット通販でも車中泊専用商品の点数は増えています。車中泊はしたいけど、車を持っていないという人も少なくありません。そこで、キャンプ用品を応用して「野宿」にトライする人が増えるでしょう。
またコロナ禍中も、屋外で換気よく安全な宴会場所としてにぎわったビアガーデンですが、2023年も手軽で解放感のあるレジャーとして再び大ブームを巻き起こすと予測します。
サブカル系では、俳句や短歌など短詩形文学がブームに。この秋開催された文学フリマには過去最高の人数が来場し、書店のランキングでも短歌集が一位になるなど勢いを感じます。その発展形として、文系「リトルプレス」や「ZINE」(個人出版同人誌)発行が増加。かつてないリトルプレスブームが起こるでしょう。
■おじさんが日本経済を救う!?
『トップガン マーベリック』の連続視聴「追いトップガン」が社会現象となったことで、おじさん経済が熱い視線をあびつつあります。気に入れば何度でも課金するおじさんを、産業界が見逃すはずはありません。
『うる星やつら』や『ヤッターマン』をはじめとする昭和コンテンツが続々復活登場。昭和ブームを下敷きに、2023年はおじさんのためのサービスや映画、書籍などが拡大しそうです。
お金があり時間もある50代おじさんのために、友達作りアプリやおじさん限定バーなど、おじさん専用のサービスがブームになる可能性も。2023年はおじさんの財布が日本経済を支える年になるかもしれません!
●カシハラ@姐御
ライター/トレンドウオッチャーとしてテレビ・ラジオなど各媒体で活躍。広告からWEB、書籍まで幅広い範囲で執筆。夏にはビアガーデン評論家としての顔も持つ。