コロナワクチンの接種費は一回約9600円。財務省によると、2021年度の接種回数は2億5700万回で、2兆3396億円の国費が投じられたという。無料接種の特例措置は今年3月末に期限を迎えるため、4月以降の有料化が検討されている。さらに、PCR検査や高価な治療薬も年内に自己負担になっていくのか?
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■ワクチンの自己負担額は?
新型コロナワクチンは予防接種法上の「特例臨時接種」に位置づけられ、その費用は全額国費で賄われてきたが、この特例措置の期限が今年3月末に迫っている。
2021年度に国が投じたワクチン接種費は約2兆3396億円。財務省は「これ以上の国費負担は持続可能ではない。特例措置は廃止すべき」との見解を示し、4月から有料となる可能性が浮上しているのだ。政界のムードは?
自民党関係者がこう話す。
「政治家にとってワクチン有料化は増税と同じ。4月の統一地方選への影響を考えれば、同時期の有料化はないでしょう。もし、特例措置をやめて重症者が増えれば、政治責任を問われかねない。そうならないよう判断は専門家に任せ、彼らから提言が出てくるまでは様子見というのが岸田政権のスタンスでしょう」
4月はないとすれば、いつになるのか?
「今年の秋に有料化というシナリオはありうる」とみるのは、医療ジャーナリストの村上和巳氏だ。
「特例措置をやめるか否かは、第8波の重症化率や死亡率をワクチン接種の有無で検証してから決めるべき。検証期間を考えると、10月頃が妥当ではないでしょうか。
BQ.1.1など新たな変異株も検出されていますが、重症化率や死亡率が大きく悪化しないようなら、年度途中でも10月から特例措置が廃止される可能性はあります」
一方、ナビタスクリニック(東京・立川)の久住英二医師はこうみる。
「コロナワクチンが有料化されるとすれば、インフルエンザや肺炎球菌などのワクチンと同じ『定期接種』に移行すると思われます」
定期接種の費用は自治体の公費で賄われるが、一部で自己負担が生じ、接種対象者に年齢要件が定められることが多い。対象外の人は希望者が各自で受ける「任意接種」となり、費用は全額自己負担となっている。
では、コロナワクチンが定期接種になればどうなるか?
「基本的にはインフルエンザワクチンと同じでしょう。接種対象者は重症化リスクが高い65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人に絞られ、接種頻度は年1回。ほかの感染症の流行期と重なる冬季に入る前に接種する形になると考えるのが自然です」(久住氏)
接種費用はおいくらに?
「ワクチンの調達価格と医師の手技料によって決まりますが、現在、コロナワクチンは接種一回で約9600円。定期接種になれば、ここから公費による補助額が引かれますが、インフルや肺炎球菌のワクチンの補助額は2000~2500円程度。
コロナワクチンも同程度の補助額になると仮定すれば、自己負担額は7000円程度。65歳未満の任意接種の人は全額(9600円)負担となります」
高すぎて誰も打たないんじゃ......?
「この負担額だと、接種率はガタ落ちでしょう。なので、国や自治体は自己負担額5000円以下になるよう、補助額を増額するかもしれません。今後、ワクチン量産による製造効率化で調達価格が下がることも予想されるので、その可能性は十分にあります」
コロナワクチンが定期接種になれば自由診療となるため、価格は医療機関ごとに異なる設定になる。ワクチンの種類によっても価格差が生まれ、「有効成分量が多いモデルナ社製がファイザー社製より1000円ほど高くなるかもしれません」(村上氏)。
■超高価な治療薬は?
ワクチン有料化と並行して議論されているのが、コロナの感染症法上の分類見直しだ。現在の「2類相当」からインフルと同じ「5類」になれば、検査や治療も有料となるのか? そのタイミングは?
「PCR検査と抗原検査は、医師が必要と判断した場合のみ、全額が公費負担となっていますが、ドラッグストアなどで入手できる2000円前後の安価な抗原検査キットの利用が一般化しており、すでに事実上有料化しているといえるのではないでしょうか。
なので、無償をやめてもワクチンほどの反発は起きない。有料化の下地はすでに出来上がっているといえます。
感染症法の位置づけが2類のままでも、医師による感染者の全数報告を取りやめたように、コロナ検査の公費負担を停止するといった弾力的な運用は可能。ワクチンより早く、今年4月から医療機関での公的検査が有料になる可能性もあります」(村上氏)
そうなればコロナ検査は保険診療となり、3割の自己負担が発生する。料金は医療機関によってバラつきがあるが、「PCR検査料の相場は1万5000円程度だから、自己負担5000円がひとつの目安」(村上氏)となる。
では、コロナと診断されれば自己負担ゼロで処方されている治療薬はどうなるか?
「薬は価格が非常に高いので、有料化のハードルが最も高い。典型はメルク社製の『モルヌピラビル』ですが、5日間の投与が必要で、薬代は約9万4000円にもなります。3割負担だとしても、3万円超の自己負担が必要になる。重症化リスクがあっても払えない患者が出てきかねないので、有料化には慎重な判断が求められます」(村上氏)
それは大問題だ!
「しかし、ファイザー社製の『パキロビッド』を含め、全額公費負担を前提に国が買い上げた薬はまだ十分に残っており、昨年11月に緊急承認された塩野義製薬の飲み薬『ゾコーバ』も計200万人分を購入している。在庫が大量にある状態なので、今年いっぱいは無償のままで提供できると思います」(村上氏)
結論! 4月に検査、10月にワクチン、来年以降に治療薬の順番でコロナ医療費は有料化されていく!?(涙)