暖房ガンガンでも寒すぎる......。なのに電気代は高騰中......。でも「冬だし仕方ない」って思わないで! 暖房ガンガンでも寒すぎる......。なのに電気代は高騰中......。でも「冬だし仕方ない」って思わないで!

毎年この時期になると思う。「今年の冬、寒くないか!?」と。でも例年と違うのはエネルギー不足でガス・電気代が高騰していること。寝る前に暖房を切ったほうがいいんだろうけど、朝方寒くて風邪ひきそう。皆同じかと思ったら、高断熱化された家に住む人はポカポカってマジ!?

■20年以上前の基準も満たしていない!

今年の日本の冬も一段と厳しい寒さになっている。しかし、例年と違うのは急騰している電気・ガス代だ。エアコンを酷使するのは気が引けるけど、命に関わるし暖房費がかさむのは仕方ない......。と、行き場のないやるせなさを抱えている人も多いはず。

しかし、どうやら僕らの家が寒いのは、この国のせいでもあるらしいのだ!

「G7の中で、住宅における断熱性能が義務化されていないのは日本だけです。アジアでも、中国や韓国では義務化されています」

そう話すのは東北芸術工科大学教授で建築家の竹内昌義氏。いったいどういうこと?

「多くの先進国では、温暖化対策の一環で、省エネや脱炭素に優れた住宅を造っていこうという潮流があり、新築住宅などの高断熱化が義務化されました。しかし、日本はかなり遅れていて、現在の住宅業界では1999年に決められた基準を『次世代省エネ基準』として掲げているんです。

しかも、義務ではないし、この基準をクリアしたとしても、最も基準が厳しいドイツと比べると、床面積100㎡の家で年間に使用される灯油タンクの量が約7倍も違う。さらに驚きなのは、日本の既存住宅の大半がこの基準さえもクリアできていないということです」

東北芸術工科大学教授、建築家 竹内昌義氏 東北芸術工科大学教授、建築家 竹内昌義氏

既存住宅において、「次世代省エネ基準」を満たしているのは1割強程度。なんと全体の7割弱は80年に設けられた旧基準、ないし無断熱で造られているという。つまり、日本の家のほとんどは寒くて当然の造りなのだ。

「ヨーロッパでは、アパートの温度管理は大家の義務になっていたりするんです。例えばイギリスでは、部屋が18℃未満になると法律違反で貸せなくなるんです。

大家としては18℃を下回るワケにはいかない。でも、暖房器具で調整するのはガス・電気代がかかる。そうなると、ちゃんと家全体を断熱化したほうがいいだろうってインセンティブが働くんです。

一方、日本はすべて借家人に任せていて、18℃以下になろうがなんだろうが、部屋を借りている人が自分でどうにかする必要があります。割を食っているのは何も知らない居住者なのです」

どうして日本は義務化が遅れているの?

「理由は大きく分けてふたつあると考えられています。まずひとつは、日本は暖かい国だという先入観です。『日本は暖かいし、こんなもんでいいだろう』と、緩い基準が設けられたのです。

でも、現在の日本はかつての四季の気候じゃなくなりつつある。特に、夏の暑さは年々厳しさを増していて、エアコンが必需品になっています。昔は風通しのいい家が理想とされていましたが、今じゃそんな家に住みたくないですよね。

40℃の中で風を感じても暑くてしょうがないし、縁側があっても縁側にいられる時間が減っている。気候は変化しているのに、家の造られ方の基準は変わっていない状態なのです」

では、もうひとつの理由は?

「もうひとつは、日本の特徴的な景気のとらえ方です。日本には『住宅の着工件数は景気と連動している』という考え方があります。景気が良ければ家がたくさん造られるし、景気が悪くなれば着工件数も減少するっていう。

そのため、新しく基準を設けるという話になると『景気を悪くするのか』と反対する人々が出てくるんです。実際、2020年までの断熱義務化が閣議決定されたのですが、『中小工務店の未習熟』という理由で国土交通省が止めました。義務化して中小工務店が造れなくなったら着工件数が減って景気が悪化する、と。

そうして住宅の着工数を維持し続けた結果、現在約849万戸の空き家が問題になっているワケです。人口も景気も伸びていた時代は数が重要だったかもしれませんが、家が余り始めた時点で質にシフトすべきだったでしょう」

しかし、昨今の世界的な脱炭素の動きを受けて、さすがの日本も延期し続けていたこの義務化を2025年に施行すると決めた。現場レベルでは断熱化は一般的になりつつあり、竹内氏によると、新築一戸建ての85%、アパートの70%がこの基準を達成しているという。義務化されれば、既存住宅のリフォームにも補助金が出ると期待されている。

■エアコンは各階に1台で十分

では、高断熱化された家での生活はどんなものなのか。

「断熱性能には細かい等級があります。等級も国や地域によって規定が違うのでちゃんと比較することは難しいのですが、日本が義務化しようとしている基準は等級4です。

等級4の家では、外気温が0℃の冬の夜に、20℃の部屋で暖房器具を切って寝ても、朝の時点で8℃にしかなりません。これが等級5になれば、同じ条件でも13℃までしか下がらないし、等級6にすれば16℃までしか下がりません。私は脱炭素のためには、等級6を義務化する必要があると思っています」

そんなに変わるなら等級を上げるのは大変な工事が必要なのでは?

「そんなことはありません。鍵は窓サッシです。窓は熱の出入りが多く、夏は窓から熱が入り、冬は窓から熱が逃げていきます。

例えば、東京都の規定でいえば、壁にグラスウールという白い綿状の断熱材を10㎝、天井に20㎝入れて、窓をアルミサッシのペアガラス(二重窓)にすれば等級4になります。木造とか鉄筋とか構造は関係なく、断熱材の量で決まるんです。

これを等級5にするためには、サッシを外側がアルミで内側が樹脂のものにするだけ。等級6にするにはサッシをすべて樹脂サッシにするだけです」

壁の間に挟まれた断熱材のグラスウール 壁の間に挟まれた断熱材のグラスウール

屋根の断熱材は、夏は太陽光の熱を、冬は室内の暖かい空気が逃げるのを防ぐ 屋根の断熱材は、夏は太陽光の熱を、冬は室内の暖かい空気が逃げるのを防ぐ

屋根と壁に断熱材さえ入っていれば、サッシの素材で一気に等級が変わるのだ。寒い地域では断熱材の量も増やす必要がある場合もある。

「等級6であればエアコンは各階に1台あれば冬も夏も十分です。私は普段、設計事務所もやっているのですが、そうはいっても不安になるお客さんもいて。

家族全員の寝室にエアコンをつけたいと言われて、『いらないんだけどな』とは思いつつも希望どおりつけたところ、夏に家族全員が自室のエアコンをつけたら家が冷えすぎて皆おなかが痛くなっちゃったそうで。『エアコンいらなかったです』って言われました(笑)。

断熱していればエアコンの台数も減るし、もちろん冬用の布団もいりません。高断熱化している家は室外機が少ないんです。

最近はインフレの影響で木材が高騰していることもあり、建築費をどうにか抑えたいというお客さんが多いんですが、私は断熱材を減らすくらいなら家を少し小さくしませんかと提案します。そのくらい断熱は重要なのです」

エアコンが減るメリットはほかにもある。

「建設時に等級6にするために、窓のサッシを樹脂にするとなると、追加で約70万円かかるとされていますが、家につけるエアコンが減ればその分のお金が浮きますよね。また、エアコンは維持コストもかかるし、十数年使った後に買い替えたりします。その買い替えるタイミングで費用が逆転するんです。光熱費と本体の値段で。

また、等級6になればエアコンの使用量も減るため、太陽光パネルを屋根の半分に載せれば、晴れの日は電力がほとんど自給できます。電気代の高騰の影響も受けずに済むのです」

断熱性能を上げるためには窓のサッシの素材が重要。アルミサッシは熱伝導率が高いため、樹脂サッシに変更することで室温が数倍保たれやすくなる 断熱性能を上げるためには窓のサッシの素材が重要。アルミサッシは熱伝導率が高いため、樹脂サッシに変更することで室温が数倍保たれやすくなる

とはいっても、今住んでいる家に断熱材をブチ込むのは時間もお金もかかるし非現実的だ。手軽にできる断熱は?

「最も簡単なのは断熱ブラインドや内窓を設置すること。断熱ブラインドは窓と部屋の間に空気の壁を作ってくれるので室温が保てます。

ダウンジャケットも体との間の空気の温度が上がるから暖かいワケです。マンションの人はリフォームないしDIYで窓の手前、室内側に新たなサッシ(内窓)を取りつければ冬は暖房がほとんどいらなくなるはず。外の騒音も軽減されます。

賃貸の人も大家さんに相談してみるべきでしょう。部屋の価値も上がるので、大家さんにとっても悪い話ではないはず」

厳しい冬の寒さに高騰する電気代。乗り越えるためには断熱化が鍵を握りそうだ!

断熱ブラインドは一般的なブラインドとは違って、それだけで空気の壁が作れるため断熱性能が高い 断熱ブラインドは一般的なブラインドとは違って、それだけで空気の壁が作れるため断熱性能が高い

●東北芸術工科大学教授、建築家 竹内昌義(たけうち・まさよし)
専門は建築デザインとエネルギー。環境省、経産省、国交省合同の「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」にも招集された