ゴミ清掃員としても働く芸人の滝沢秀一(マシンガンズ)が、ゴミを回収していて気が付いた事実、それが「金持ちの家から出るゴミは少ない」ということ。長年にわたりゴミを見続けた滝沢氏だからわかる、ゴミに隠された秘密を教えます! みんなでゴミを少なくして、金持ちになろう!
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最近、ゴミの中からお金が見つかったというニュースが世間を騒がせています。
1月30日に、札幌市の資源回収施設で雑紙(ざつがみ)の仕分け中、1000万円が見つかりました。また、2月20日には大阪府熊取町のゴミ処理施設で、タンスや紙くずに交じって300万円が入った封筒が見つかっています。
大阪のケースではゴミを持ち込んだ人が分かっていたため、お金は持ち主に返却されましたが、札幌市ではまだ持ち主は見つかっていないそうです。
ところで、1000万円が紛れ込んでいたという「雑紙」って何かわかりますか? 古紙回収には新聞、雑誌、段ボールなどがあり、それぞれ混ぜられることなく回収され、リサイクルされます。それ以外のお菓子の箱やカレンダー、封筒、コピー用紙なんかのことを「雑紙」と呼び、これらは雑誌とおなじカテゴリに分類されています。
ゴミの中からお金が出てくるケースは、この古紙回収にとても多いです。いまだにヘソクリを本の間に隠す人が多いんでしょう。問い合わせもよくありますね、「今日捨てた雑誌の間に20万円なかったですか?」とか。
古紙回収ではありませんが、以前「間違えて指輪を捨ててしまったかもしれない」という問い合わせがあり、ゴミを貯める「ピット」の手前で収集車を開いて、持ち主が中を探しているのを見たことがあります。ピットの深い穴にゴミを入れてしまったら探し出すのは不可能です。気が付くのがゴミを出した翌日だったら、もうどうしようもありません。
各自治体の条例によって違いはありますが、一度捨てられた古紙やビン、缶などの資源は自治体の所有物となりますので、ゴミだと思って自分のものにしてしまわないように注意してください。札幌市の1000万円も、持ち主が見つからなければ札幌市の所有になるようです。
一時期、雑誌や新聞が盗まれて、それを売っている人がいるということで問題になったことがありました。一説によれば、盗んだ新聞や雑誌を売ることで年間600万円ほど売り上げていた人がいたらしいと。そうなればもう「ゴミ」とは言えません。資源なので見逃すわけにはいかないですよね。
また、我々清掃員にとっても資源が盗まれるのは大問題です。皆さんは「ゴミが減っていいだろう」と思われるかもしれませんが、資源が日常的に盗まれて「資源が減った」と判断されると、回収の車両や人員が減らされてしまいます。一度減らされた人員はなかなか元には戻らないため、作業員たちの負担はとても大きくなり、雇用も減ってしまいます。
僕は1000万円ものお金が捨てられているのを見たことはありませんが、捨てられているソファーのクッションの隙間から小銭を見つけることはよくあります。僕が見つけたお金の最高額は520円です(笑)。
我々清掃員は、集積場に出されたゴミを着服するのは絶対にNGです。1円だって着服すればクビになります。
ゴミ回収の過程で見つけたお金は、ゴミ集積場にためておく入れ物があるので、1円であってもそこに入れるのがルールです。まれに燃えるゴミの中に1円や5円が捨てられていることもあるので、取り出してそこへ入れるようにしています。
お金ではありませんが、一見古いレコードが捨てられていて、実はそれがものすごく高価で貴重なものだった、ということがありました。レコード好きの作業員が悶えていましたが、いくら価値があるとわかっても着服するわけにはいきません。
また、海外からの出稼ぎの作業員が捨てられていたスニーカー見て「うちの国ならあと2年は履ける、宝物が捨ててある」と言っていたこともあります。一概にゴミと言っても、人や立場によって見え方はまったく違うんです。
本人はゴミと思って捨てても、他の人が見たら宝物に見えることもあります。それでは形を変えてお金を捨ててるようなものです。一度手にした物は安易に捨てずに、大切にしたいものですね。
滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数
※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。