ついに3月13日、マスクの着用が自己判断となる。前例のない事態だけど、みんなはどう動く? アンケートや働く人たちの声から考えてみた。
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■いよいよ自己判断カウントダウン!
3月13日からマスク着用が自己判断に。ただ、「いきなり自分で判断しろって言われても......」と戸惑っている人が大半なのでは。というわけで、判断の一助として、20代から50代の男性会社員400人にアンケートを実施!
まずは、マスクをはずそうと思いますか?というストレートな問いから。結果は、「はずす」「はずす機会が多くなる」の積極派と「はずす機会は少ない」「つけ続ける」の慎重派がほぼ真っぷたつに割れることに。年齢を重ねるほど慎重になるかと思いきや、その影響はないようで、各年代共に同じような結果だった。
ここで気になるのは、6割から7割の人が「状況を見て」と回答したこと。どのような〝状況〟なら、マスクをはずすのか? さまざまなシチュエーションやその〝状況下〟で働く現場の声も聞いてみた。
もともと必要ないとされていた、屋外で会話のないときは、Q1で「つけ続ける」と答えた22%以外は「はずす」と回答。屋外では、気兼ねなくはずしても問題なさそう。
続いては、職場内。デスクワーク時は、はずす人が多く、65%程度だった。ただ、会話のある対面会議では、53%程度と少なくなり、仕事相手の会社に出向くときでは47%ほどと慎重姿勢。特に仕事相手には気を使うようで、食事や飲み会でも、3割程度の人がはずさないと答えた。
ただし、仕事における「状況を見て」は場所というより、〝周囲の出方〟がほとんどのはず。ケース別の対処法を、現役広告代理店勤務でビジネス処世術に詳しい『気配りの正解』(ダイヤモンド社)著者の後田良輔氏に聞いてみた。
もし、取引先や上司がマスクをはずして会話してきたら、自分もはずしても大丈夫?
「心理学にミラー(鏡)のように相手のまねをして、相手に親近感を抱かせるというミラーリングというテクニックがあります。相手がマスクをはずして会話してきたなら、率先してマスクをはずすべきです。それだけでなく、相手の動作もまねしながら、大きくうなずくなどあいづちを意識的に行ないましょう」
仕事相手との飲み会では?
「相手がアゴや胸ポケットにマスクを入れていないなら、する必要はありません。同じスタンスで楽しんでください。それより重要なのは会話が楽しいかどうか。マスクに気がいかないように、盛り上がる雑談を3つほど用意するのがオススメです」
そして、こんな理論も。
「どうせやるなら、他人の様子を見ることなく、一番乗りでマスクをはずすくらいの姿勢でいるといいかも。マーケティングに『キャズム理論』というものがあり、その中で最もメリットがあるのは、イノベーター(革新者)といわれています。
確かに白い目で見られることはあるかもしれませんが、多数が様子を見ている中でマスクを一番にはずせば、ある意味ダークヒーロー的存在になれることでしょう」
■交通機関やスーパーは?
次は交通機関。政府からは着用推奨が続けられる通勤電車内はまだマスク着用率が高くなりそうで、はずさない人が6割超え。飛行機内でも6割近い人がはずさないと回答。アンケートではこんな声が。
「マスクの着用を拒否した乗客が飛行機内から強制的に降ろされたイメージが強すぎる」(38歳・東京都)
では、現場の声はどうか。国内航空会社のキャビンアテンダントが語ってくれた。
「13日からは定期航空協会の決定に従って、乗客も乗務員も着用が任意になります。私はトラブルを避けるために基本的には着用すると思います。ただ、会話が聞こえづらいと訴えるお客さんもいて、そういうときにマスクを下げても大丈夫になるのは助かります」
運転手と狭い空間を共にするタクシーでも54%がはずさないと回答。東京都内で勤務するタクシー運転手に話を聞いた。
「今はマスクなしで大声で会話するお客さんには、会社情報がプリントされた個包装のマスクを渡しているんですが、13日からはやめるつもり。その日以降は酔っぱらいに渡すと、『自己判断だろ』とケンカを売られると思うので(笑)」
続いては、量販店での買い物。現在はマスク着用が基本だが、半数以上がはずす意思を見せている。
東京都内のスーパーマーケットで勤務する男性が語ってくれた。
「現状、『ワクチン接種済みでもマスクをご着用ください』という張り紙がありますが、それははずすと思います。ただ、私自身は当分つけ続けると思う。髭のケアとかが面倒になってしまい、マスクで清潔感を保てるならそっちのほうが楽です」
一方、はずしていくと答えたのは、「顔」が仕事の百貨店の化粧品売り場で勤務する女性。
「日本百貨店協会からは個人の判断に委ねるという通達があったようで、徐々にはずす機会は増えていくと思います。お客さんがはずして来られたら、自分もはずすつもりではいます」
ほかに気になるのは、ビュッフェやドリンクバーなど、今まではマスク着用が必須と思われていた飲食物を扱う空間。結果は、ホテルのビュッフェ、ファミレスのドリンクバー共に、6割超の人がはずす意思を見せている。
関東近郊のシティホテルで働く女性が語ってくれた。
「現在、従業員は不織布マスク必須で、つけていたマスクを職場で捨てるときはビニール袋に包んでから捨てるなど厳格ですが、お客さんには基本的に強制はせず、ビュッフェの料理を取りに行くときなどは着用をお願いするが、従ってもらえなくても深追いはしないという感じでした。
13日からの方針は現時点での指示はないですが、そもそもお客さんへの着用を強制してないので、特にゲスト対応で大きく変わることはなさそうです」
都内のファミリーレストランで勤務する女性は13日から方針が変わりそうと語る。
「今までは『ドリンクバーご利用の際はマスクの着用にご協力ください』と伝え、していない方には必ず注意するよう言われていましたが、それがなくなりそうです。正直、注意すると舌打ちしてくるお客さんとかもいたので、ちょっと気が楽になりました」
■初対面女性とはどうする!?
何かと話題になる学校の現場はどうだろう? ちなみに保護者はまだ牽制(けんせい)し合っているのか、保護者同士の雑談では「はずす」と「はずさない」がほぼ半々に割れる結果に。一方の子供はというと? 東京都内の中学校教員が語ってくれた。
「夏場でも『素顔を見られるのが恥ずかしい』と、はずしたがらない生徒が圧倒的に多かったです。13日からは『はずさない、つけていないでお互いを指摘し合わないよう』指示するように言われました。
特に基礎疾患や感染が不安のためはずさない子や、障害などの理由でマスクをつけられない子に着脱を強制しないことと注意されています。
ただ、さっきも言ったように、基本的にみんなはずしたがらないので、現状維持の生徒が多いと予想され、特にトラブルにはならないと思います」
一日に多くの人と対面する配達員はどうだろうか? ちなみにアンケートで配達員がマスクをしていないことに抵抗があるか?を聞いてみたところ、こちらも「ある」と「ない」が半数に割れた。都内のウーバーイーツ配達員に話を聞いてみた。
「現状は配達開始する前に、感染に対するチェックが必要。必須のコロナ感染の可能性がないかはチェックしないと次の画面にいけないが、マスクの項目はチェックしなくても配達は開始できます。13日からは今のところ何も指示はないが、マスクのチェック項目だけなくなるのではと予想しています。
いずれにせよ、今までどおり、お届け時や店舗受け取りの際はマスクをしておこうと思っています。最近はコロナに過敏に反応するお客さんはほとんどいないし、嫌な思いも特にしなくなりました」
最後に、マッチングアプリなどで初めて出会う女性と会うときにマスクをはずすかを聞いてみたところ、65%程度の男性がはずすと回答。女性はどう思っているのか? マッチングアプリのメディア『マッチアップ』の編集長で恋愛婚活ラボ所長の伊藤早紀氏に聞いた。
「『食事をするときに初めてはずす』のがベストだと思っています。まず、マスク問題は倫理観が入ってきます。この価値観がズレると恋人対象からもはずれてしまいますが、これはマッチングアプリで事前に確認し合うことはほぼ不可能。相手がマスクをつけていてほしい場合、最初からはずしていくと、かなりのリスクがあります。
また、モテ観点で考えると、マッチングアプリの初デートは『写真と同じ人来るよね?』を確かめる場でもある。そう考えるとマスクをつけていたほうが有利です。なぜなら、目元だけしか見えていないと、写真とのギャップを感じさせないから。
待ち合わせ時、ノーマスクの顔でギャップを感じさせてしまったら、その瞬間女性側の気持ちは萎(な)えてしまい、巻き返すのが大変です。マスクをして、食事までの間、アイスブレイクとしてある程度いい印象を植えつけられれば、もしギャップがあっても緩和することができます」
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前代未聞の事態だけに、正解はないけど、「はずしても注意しない」土壌が築かれているのは現場の声でわかった。あとは、みんなの心が「さよなら」を告げるタイミングを決めるだけなのかも。