ゴミ清掃員としても働く芸人の滝沢秀一(マシンガンズ)が、ゴミを回収していて気が付いた事実、それが「金持ちの家から出るゴミは少ない」ということ。長年にわたりゴミを見続けた滝沢氏だからわかる、ゴミに隠された秘密を教えます! みんなでゴミを少なくして、金持ちになろう!

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ある番組のロケで、「ゴミ屋敷」の片付けをさせてもらったことがあります。家の天井まで届くほどゴミが積みあがっていて「このゴミ、どこから片付けましょうか?」と言ったら、「うちにはゴミなんかねぇから帰れ!」と怒られてしまいました。

そこで衝撃を受けたんですよ、僕から見たらゴミだけど本人からしたらゴミじゃない。ゴミの概念を覆されたというか......。汚いからゴミ、きれいだからゴミじゃないとか、そういうことじゃないんだと。本人からすれば思い入れがあるものはゴミじゃないんですね、だから捨てられないんです。

そのときは会話をしながら少しずつ納得してもらって片付けました。ゴミを捨てること自体は簡単ですけど、持ち主の説得が大変。カウンセリングに近い感じでしたね。

ゴミ屋敷ってどこに何があるかさっぱりわからなそうですが、友人のゴミ屋敷みたいな部屋で「リモコン取って」と言ったら、すぐに出してきました。本人は把握してるんです、だから困ってない。

一般的な住宅街で、爪切りがまとめてゴミに出されていることが意外とあるんです。ゴミ屋敷ってほどじゃないのかもしれませんが、たぶん爪切りが見つからなくて「探すより買った方が楽でいいや」って、100円ショップとかで買ってるんだと思います。

それで大掃除したときに大量に見つかって「捨てちゃえ」みたいな感じなんでしょうね。それって本当に無駄なお金使ってるなと。爪切りなんて一家庭に1個でいいし、ちゃんと取っておけば一生使えますよ。そういったことも物を大切に使う「お金持ち」との違いだと思いますね。

ちなみに僕の後輩でゴミ屋敷清掃のアルバイトをしている芸人の六六三六(ロクロクサンジュウロク)の柴田ってヤツがいるんですけど「ゴミ屋敷の住人はエロい人が多い」と言ってました。AVとかエロ本、大人のおもちゃが大量に出てくるんだと。自分の欲望に忠実な人の家は、ゴミ屋敷になりやすい傾向があるんですかね。みんなわざとゴミ屋敷にしようとしてるわけじゃないと思うんですよ。

ゴミ屋敷に住んでる人が性格悪いとか、そういうのはあまり聞かないですね。ものに愛着があって捨てられない、大事にしすぎる人が多いんだと思います。そういったところで最近問題になっているのが、おじいさんおばあさん世代のゴミ屋敷です。

この世代は「ものを持ってることは豊かな証拠」という考えの人が多い。だから捨てられないんですよ。高齢化が進む日本では、これからもっとゴミ屋敷って増えるんじゃないかなと思っています。

中に液体が入ったままのものは捨てられないので処理場で分別されますが、こんなに大量にあるんです中に液体が入ったままのものは捨てられないので処理場で分別されますが、こんなに大量にあるんです

これも六六三六・柴田の話なんですけど、とある認知症の住人は、自分が買ってきたものを忘れちゃうらしいんです。まだ食べないうちに次の野菜を買ってきて腐らせちゃう。家を片付けていると、干からびてしまった明太子が落ちていたりするようです。

一人暮らしの老人が、エレベータの無い団地でゴミを捨てるのが大変で、家にため込んでしまうパターンもあります。いろんな事情でゴミ屋敷化することが考えられます。

僕のまわりでよく聞くのが、親が亡くなって実家の片付けをすることになったけれど、ものが多すぎてノイローゼになりそうだ、という話です。70~80年生きた人の持ち物を処分するって大変ですよ。その街のルールに合わせて分別し、ゴミ出しをしないといけないんですから、それはノイローゼになってもおかしくないと思います。

業者に頼むと家1軒片付けるのに数百万かかることもあるそうです。だから終活って大事なことだと思います。みなさんの親世代はあてはまると思うので、今のうちに手をつけておいたほうがいいかもしれません。

地域によって名前は違いますが、「ふれあい回収」などと言って、粗大ゴミを運べないおじいさんやおばあさんの家へ行き、回収するという仕組みを導入しているところがあります。

これってまだ予算に余裕がある自治体しかやっておらず、知らない人も多いと思います。家の中までゴミ回収をしに行くことで、住んでいる人の健康確認やゴミ屋敷化するのを防ぐことができます。

ゴミが減ると我々清掃員の人数は減らされてしまいますが、そういう人員を「ふれあい回収」に回すことができたら最高ですよね。この取り組みは、日本全国でやるべきだと思っています。

滝沢秀一(たきざわ・しゅういち)
1976年9月14日生まれ、東京都出身。
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動するかたわら、ゴミ清掃員としての仕事もこなす。
著作はゴミ清掃員の体験を書いたエッセイ『このゴミは収集できません』ほか多数

※ごみの捨て方のルールは自治体によって異なります。お住まいの地域のルールをご確認ください。

マシンガンズ・滝沢秀一の『金持ちのゴミはなぜ少ないのか?』は毎週木曜日更新中!