連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第7回
ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!
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ウーバーイーツ配達員が日々おびえているもの。それは注文者や店からの評価です。
配達員のプロフィール画面には「直近100回のGOOD評価の割合」が表示され、自分が100回の配達の内、何回GOODと評価されたのか常に確認することができます。
評価の高低でどうなるのかは運営から一切アナウンスがありません。なので気にせず働けばいいのですが、BAD評価が続くと運営から「最近BAD評価が多いですね」とメールが届きます。
さらにウーバーイーツの注文者用アプリには、月額498円を払うと配達手数料が無料になる「Uber One」というサービスがあり、この特典には「高評価ドライバーが運転するUberに毎回5%オフでご乗車いただけます」と書かれています。
「ご乗車」と書かれているので、恐らくこれはタクシーのサービス。なので、ウーバーイーツ配達員には関係ないことなのかもしれませんが、少なくとも「評価が高い人と低い人を分けて、高い人に配達依頼をたくさん出す」ことが技術的に可能だとわかります。
そんなわけで、配達員は運営から「評価は関係ありませんよ」と言われても、できるだけBAD評価をされないような配達を心がけています。
私も「高評価率95%以上をキープ」を目標に、日々おびえながら配達していますが、配達中にBADの恐怖を感じるのが注文者からのメールです。
ただ、メール内容のほとんどは「部屋は203号室です」「ドアの前に敷いてある紙の上に置き配してください」など、配達をスムーズにしていただくためのもの。こういったメールは店で料理を受け取った直後に届くので、自転車をこぎ出す前に確認できますし、なんら恐怖を感じることはありません。
一方、恐怖でブルっとなるのは配達先へ向かっている最中に届くメール。注文者用のアプリには、マッチングしてから配達完了まで、配達員がどこにいるのか表示されるようになっていますが、この位置表示画面を確認しながら「そっちは遠回り」とか「次の交差点を右」といった指示を出される方がたまにいます。
おそらく、配達員が無事にたどり着くか心配で指示を出されているのでしょう。ですが配達員用のアプリは、注文者からメールが届いたら文面を確認するまで延々と通知が届く仕様になっているので、届くたびに自転車を止めてメールを確認しなければなりません。
ときには工事が行なわれていたり、雨が降り始めたので滑りやすいマンホールの多い道を避けるといった事情で遠回りをする場合もあります。ですが、そんな配達員の事情を運営側がフォローしてくれることはなく、こういったメールによる指示が多い件は「配達が遅かった」などの理由でBAD評価が付けられる可能性が大変高いです。
さらに恐怖を感じるのは、配達後の注文者からの電話。注文者用のアプリは、運営や店への連絡はチャットやメールが基本ですが、配達員にだけは電話連絡ができる仕様となっています。なので「商品が足りない!」というクレームが結構入ります。
以前は注文者から店や運営に簡単に電話できるようになっていたので、このような場合は「私は配達だけを請け負っているので、お店に電話してご確認ください」と返答していたのですが、最近は配達員の立場を説明しても「おまえにしか電話できないんだ」「そうやって責任逃れするヤツばかりだな!」と言われるので、そんなときはBAD評価を甘んじて受け入れる以外の選択肢がありません。
1年前にBAD評価を受けた時も、配達後の「商品が足りない」電話パターンだったのですが、そのとき渡したのはマクドナルドの商品。
ウーバーイーツで注文したことのある方はご存知だと思うのですが、マクドナルドは紙袋に商品を入れてシールで封をします。そんな状態で配達員に渡されるのに、電話の先からは「中身を確認しないおまえが悪い」とご立腹。もし、店で受け取る時にシールを剥がして中身を確認したら、確実に店からBAD評価がつけられます。注文された方の怒りの気持ちもわかりますが、この時電話をされた方のおられる場所から店までの距離は100mほどだったので、そのときばかりは「だったら店に行けよ」と思いました。
最近はありがたいことにBAD評価を受けることはありませんが、配達中、配達直後にメールや電話が来ると体がゾワっとなります。
●渡辺雅史(わたなべ・まさし)
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。