お昼の配達では「遅せーよ!」「もうすぐ昼休みが終わるのにどうやって食うんだよ!」という言葉をぶつけられることもしばしば......お昼の配達では「遅せーよ!」「もうすぐ昼休みが終わるのにどうやって食うんだよ!」という言葉をぶつけられることもしばしば......

連載【ギグワーカーライター兼ウーバーイーツ組合委員長のチャリンコ爆走配達日誌】第9回

ウーバーイーツの日本上陸直後から配達員としても活動するライター・渡辺雅史が、チャリンコを漕ぎまくって足で稼いだ、配達にまつわるリアルな体験談を綴ります!

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配達先でもっとも多く浴びせられる言葉。それが「おせーよ!」。特にお昼の配達では「もうすぐ昼休みが終わるのにどうやって食うんだよ!」という言葉とともにぶつけられることが多いです。

ではなぜ遅くなるのか。それはウーバーイーツがマッチングアプリだから。

システムの細かい概要は公開されていないので、異なるところもあるかもしれませんが、私がこれまでの配達やサービスを利用したことのある人からの声を総合すると、注文から料理到着までの流れはこんな感じになります。

(1)利用者がアプリで食べたいものを注文する
(2)店に注文が届き、料理を作り始める
(3)店に注文を出した数分後、配達員のマッチングを始める
(4)店の近くにいる配達員とのマッチングが決まる
(5)配達員が店へ向かう
(6)店で配達員が料理を受け取る
(7)利用者に料理を届ける

それに対して、昔ながらの出前や宅配ピザの場合はこんな感じです。

(1)利用者がスマホや電話で食べたいものを店に注文する
(2)店で料理を作る
(3)料理ができたら、店にいるスタッフがすぐに配達
(4)利用者に料理を届ける

ウーバーイーツは店の周辺にいる配達員とマッチングするシステムのため、たまたま店の近くにいる配達員が依頼を受けたら、料理ができあがる時間に店に到着して、すぐに配達を始めることができます。

ところが、効率よくマッチングが決まらないことも多く、注文の多いランチ時やディナータイム、配達員が少なくなる雨の日は注文してから配達員が決まるまで数十分かかることもあります。また、決まったとしても配達員のいる場所が店から離れていて、結局注文から到着まで1時間以上かかることもあります。場合によっては配達員がマッチングせず、注文不成立となることもあります。

このため、ウーバーイーツを初めて利用する方が多い新年度や年末年始は、BAD評価を受ける可能性が高まります。

そこで私は、配達依頼が来た時に表示される金額と時間帯から「ヤバそうな注文=地雷案件」を推測するという方法で不用意なBAD評価を回避しています。

以前の記事「予告なしに収入が下がる!? ウーバーイーツ配達員の報酬システム」でも触れましたが、最近の配達員の報酬は需要と供給で決められています。そのため、配達の依頼を出してすぐにマッチングが成立する配達で得られる収入は少なく、逆になかなかマッチングが成立しない配達は収入が高くなります。

そして、マッチングが決まらないと、配達員に声をかけるエリアが広くなり、自分が待機している場所から5km先の店へ料理を取りに行くという依頼も発生します。

配達員用のアプリには依頼が届くと、その配達で得られる金額や受け取りに行く店の場所が表示されます。都内の自転車配達員の場合、普段は1回配達して300円から400円、受け取りに行く店までの距離は長くて1~2kmといったところですが、ヤバそうな案件は店まで2km以上、1回1000円を超える場合もあります。

受け取りに行く店までの距離は長くて1~2km、1回300円から400円のいわゆる普通の配達受け取りに行く店までの距離は長くて1~2km、1回300円から400円のいわゆる普通の配達
店まで2km以上、1回1000円を超える場合もあるヤバそうな案件店まで2km以上、1回1000円を超える場合もあるヤバそうな案件

注文が少ない時期や、GOOD評価が多いのでBAD評価が多少ついても問題ない場合、ライターの仕事がまったくない月はBAD評価覚悟で依頼を受けます。ですが、経済的に余裕があるときは、このような「地雷案件」は極力避けています。

最近はウーバーイーツのシステムを理解して活用されている注文者が多いので、こういう案件でも普通にドアの前に置き配して終了ということがほとんど。「地雷」という表現は大げさなのですが、私が配達するタワーマンションの多いエリアはお仕事ができる方が多くお住まいで「プロ意識が足りない」と、こんこんと仕事論を口頭やメールで諭す方もいらっしゃるので、一旦冷静に言葉を飲み込みつつ、ヘラヘラしながら料理を渡し、BAD評価を食らっております(苦笑)。

●渡辺雅史(わたなべ・まさし) 
フリーライターとして雑誌や書籍への執筆をするほか、ラジオ番組やテレビの番組の構成作家としても活躍。趣味は鉄道に乗ること。国内の全鉄道路線に乗車したほか、世界20の国・地域の鉄道に乗車。

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